【オーダーメイド物語】異能の探偵がつむぐ物語#3
玄関ホールで私を迎えるステンドグラスからは、まるで祝福のように光が差し込んでいた。
ここがかつて悲劇の舞台になったという現実を忘れてしまうほどに美しい。
思わず感嘆のため息がもれて、それから、そんな場合ではなかったと気を引き締める。
白い手袋を脱ぎ、素手で植物の意匠を凝らした階段の手すりへ。
刹那。
目の前で、世界が青く瞬いた。
続いて起こるのは、“あの日の事件”につながる一連の映像群だ。
まるで映画フィルムのように、青いフィルターのかかった視界で切り取られた場面たちが次々と目まぐるしく披露されていく。
この指先から伝わるのは、家に刻まれた記憶の数々。
『あの日、本当は何があったのか、知らなければ私は先に進めないんです』
この屋敷を手放すために、遺族であり相続人となった少女は私をここへ派遣した。
私はその答えを見つけるために、階段に、壁に、テーブルに、調度品たちに、家を構成する彼らに尋ねていく。
彼らは時に愛情深く、時に冷徹に、事実をありのままに映像として差し出してくれるから。
過去という名の時間に埋もれ、澱み、変質してしまった真実を求めて、丁寧に彼らの記憶を紐解いていける。
事故か、他殺か、あるいは自殺か。
家に上がり、場を整え、“真実”を再構築して依頼主へ返すことが私の仕事。
「そして得た答えが、あなたの救いとなりますように」
これもある意味で掃除だなと笑い告げた先輩の言葉が、いま、私を動かしている。
了
Copyright RIN
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異能の探偵がつむぐ物語とは?
Facebookにて、オーダーメイド物語の新メニュー考案のために募集したモニター企画。
ご依頼主様がおまかせ特殊設定の探偵になり、登場シーンか推理シーンのどちらかが綴られます
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