★異能の探偵がつむぐ物語#1
当主夫婦の葬儀を終えて以降、意図的に荒れるよう細工された庭園から私は館をのぞむ。
ここには積み上げられたいくつもの石の塔が、庭の至る所で時折チカリと光を反射させた。
一見不規則なソレが殺害計画の一端を担うことを、私はすでに知っている。
事件は、いまはまだ起きていない。
けれど、このままでは幼い令嬢は両親の後を追うことになるのは火を見るよりも明らかだ。
「さて、この推理に抜けはないかな?」
愛すべき仲間、灰色のハシビロコウのぬいぐるみ達に笑いかければ、彼らもまた私の思考に問いを投げ込む。
「彼女があれをみていたとしたら?」「内通者が執事なら?」「彼の言葉に矛盾は?」「約束が嘘だったら?」「あの可能性は考えた?」
運命の三女神から渡されたペパーミントグリーンの手帳へと、ありとあらゆる角度からの可能性を書き綴り、同時に、彼らとブレインストーミングを重ね、煮詰めて、醸造された結論と対策を検証し。
私は確定された未来を視る。
「さあ、悲劇を止めに行こう」
私の声に、頼もしいぬいぐるみたちがふわりと羽を広げて一斉に飛び立つ。
遺言となってしまった友との約束のため。
この広い屋敷にただひとり残された少女を護るため。
優しい日常をあの子が取り戻せるように、私は相棒たちとここへ来た。
これから数分後に訪れるだろう配達人からスタートする死の罠は合計七つ。
死の可能性をひとつ残らず潰すのに、掛かる時間はたぶんきっと十分にも満たない――
了
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異能の探偵がつむぐ物語とは?
Facebookにて、オーダーメイド物語の新メニュー考案のために募集したモニター企画。
ご依頼主様がおまかせ特殊設定の探偵になり、登場シーンか推理シーンのどちらかが綴られます