【オーダーメイド物語】誕生日の物語#10
空を染める蜂蜜のようにとろりとした光が、ゆるりと地平線の彼方へ溶け消えていく。
黄金から紅玉を経て、完全なる宵闇へと世界が染め上げられていく中、私はひとり、怯むことなく突き進む。
呪術師たちの不吉な予言が、耳鳴りのようにまとわりつき、砕けた城壁にわだかまる瘴気、胡乱な視線、獰猛な叫びと、陽の落ちた戦場はさらなる穢れと怨嗟を生み出し続けるけれど。
そのすべてを跳ね除け、薙ぎ払う力が、熱情が、奇跡が、今の私にはある。
この手の中に握りしめているのは、約束。
この目が見据える先にあるのは、天命。
だから、走る。進む。
いかなる厄災を前にしようと、止まる理由などひとつもない。
傍らには、青く蒼く碧く燃えあがる蝶が寄り添う。
気が遠くなるほどの遥か遠く、天上にて観測者として在り続けるあの人が遣わすソレの――ほんのわずかな羽ばたきが、《運命の歯車》を大きく狂わせると識るからこそ。
ただ一度の邂逅で魂すら捧げ尽くし、神の花嫁と成った我が身を武器に、私は夜を、戦場を、駆け抜けるのだ。
*誕生石・誕生日花*
ニチニチソウ:優しい追憶・ゆるぎない献身
ボダイジュ:夫婦愛,結婚
ヘリオドール:高い精神性・希望・輝く日
ルビー:情熱・勇気・自由・威厳
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▶︎誕生日の物語とは?
あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
正式なリリースの前にFacebookでモニター募集させていただいた34編を順次公開いたします