★鉱石の囁きを閉じ込める物語#05
フローライトの囁き
空も草木もあらゆるものが眠りにつく深夜。
工房に星のカンテラを吊るし、私は今日も陽がのぼるまでの時間を音匣作りに費やしている。
黄昏に向かう空のカケラ、夜明けを迎えた空のカケラ、そして澄み切った紺碧の空のカケラ、ありとあらゆる美しいカケラたちを丁寧に継ぎ合わせて作る音匣。
手のひらに乗る小さなソレへそっと息を吹き込めば、音匣はほのかに光を灯し、リンリルリリンと愛らしい音色で歌い始めた。
柔らかな羽毛を敷いた出窓の飾り棚へとならべ置いてみると、またたくまに先にあったモノたちと共鳴し合い互いの音色で絡み合う。
旋律が重なり合い、紡ぎ合い、子守歌のようなやさしい音をともなって、青や紫、碧に橙と、明滅するやわらかな光となって、この空間を満たしてくれる。
「おかえりなさい、おつかれさま、愛しているわ、いとしい子たち」
ここは天使たちが羽根を休めるための場所。
この音匣は世界中の悲しい心を癒してまわる、灰色の優しい天使たちひとりひとりのための魂の揺籠となる。
ひとつやふたつではもちろん足りない、十や二十でも心許ない。
あの子たちが帰ってくる場所を、あの子たちが真に安らげる場所を、私は作り、護り、拠り所となり続けるために存在すると決めている。
それがあの子たちをこの世界へと迎え、天より託された私の使命。
了
◆1-30-1 フローライト
キーワード:知性、創造性、集中力、過去と未来
Copyright RIN
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Facebookにて、オーダーメイド物語の新メニュー考案のために募集したモニター企画でした。
オーダーメイド物語としては初のお手紙方式(郵送)でお届けです。
運命のダイスを転がした結果の鉱石をモチーフとした、少し不思議な500文字の物語。
物語とリンクする形で、鉱石イメージのインクを使い、
ガラスペンでミニカードに「鉱石の囁き」を綴っております。
*ミニカードの内容はこちらでは非公開としています