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【読書】名探偵のいけにえ〜その信仰に咎はあるか?

■名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件
■作:白井智之

奇跡の楽園とされるジョーデンタウン。
あらゆる傷や病を癒やし、怪我も病気も事故も存在しないそこで殺人事件は起きたーー

「容赦がない」
このひと言に尽きる作品でした。
タイトルの意味がわかることで一層その印象が強くなります。

密林に棲まうカルト教団と、乗り込んできた調査員たちの前で起こる殺人事件。
物語のネタそのものは他で見ることもあると思います。
でもいざ読んでみると、その質感は妙に生々しい手触りで、エグみがあるけれど、それがクセにもなる独特の味わいを持つ作品に。
本来触れるべきではないニンゲンの内側に踏み入っていくような感覚もします。

「信仰とはなんぞ?」に触れながら、とある探偵のビギニング的位置付けとなっているのも面白いです。

そして、殺人事件に対する怒涛の推理。
披露される推理はいくらあってもいい、と思わせるほどにひとつひとつ積み上げてくるんです。
多重推理の妙!

なお、探偵の推理に受け入れてしまった時点で、自身での思考を放棄し盲目的となった自分にも気付かされたりします。
これもまた、ある種の信仰。

前作の『名探偵のはらわた』から続く、独特の読後感を堪能しました。

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