★鉱石の囁きを閉じ込める物語#04
バイオレットスターサファイアの囁き
最果ての地で生まれた滅びの歌が、小さな村から街へと移り、広がり、やがて王都へ浸食し始めていた。
動植物はそのままに、ひとの心だけが病んでいき、ひとの作ったものだけが脆く壊れていく呪いの歌だ。
騎士団ですら対処困難な事態の収束に、私たちは宮廷魔術師の矜持として声を上げる。
「できることならどんなことでも」
「希望を示して見せましょうとも」
そうして始まった船旅は、まさしく『嵐』のような日々だった。
時に荒れ狂う波に翻弄され、時に海獣により空高くまで押し上げられ、時に岩礁の狭間へと追いやられ、それでもなお航海は続く。
けれど、私たちの心はつねに絶望から一番遠い場所にあった。
蝕まれていく魂の浄化に必要なのは星の石。
私たち魔術師の祖が神の契約をもとに作りあげた始まりの地、そこにのみ生まれる魔硝石を手にして戻ることが私たちの使命だと分かっていたから。
一度旅の目的を定めてしまえば、私たちに不可能はないと知っているから。
立ちはだかる数多の困難さえも、やるべきことがわかっているのなら、あとはいかになすべきかに意識を向けるだけのこと。
たやすくはなくとも、方法は必ずみつかる。
上も下も右も左も視界を埋め尽くすほどにあふれ瞬く星々に私たちは確かな導きを感じていた。
進むべき光が見えていた。
――運命はいつでも、自分たちの手で変えることができる。
了
◆6-7-2バイオレットスターサファイア
キーワード:叡智・覚醒・運命・自信
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Facebookにて、オーダーメイド物語の新メニュー考案のために募集したモニター企画。
オーダーメイド物語としては初のお手紙方式(郵送)でお届けでした。
運命のダイスを転がした結果の鉱石をモチーフとした、少し不思議な500文字の物語。
物語とリンクする形で、鉱石イメージのインクを使い、ガラスペンでミニカードに「鉱石の囁き」を綴っております。
*ミニカードの内容はこちらでは非公開としています