★鉱石の囁きを閉じ込める物語#02
インペリアルトパーズの囁き
乱反射を繰り返すシャンデリアのきらめきと人々のさざめきで華やぐ大広間で、私はふたりの友人と互いの手を握りあう。
そうしなければ飲まれてしまいそうなほどの圧だった。
「覚悟はいい?」
「もうはるか昔に決めてるわ」
夕焼けよりもやわらかな、わずかに赤みを帯びた黄金の輝きが、私たちを照らす。
この魔術都市において最高機関とされるアカデミー、そこで催されるのはパーティという名の学会であり、派閥抗争であり、査問会だ。
各分野の専門家たる教授陣たちが名を連ねるこの日のために、私は友人と準備を進めてきた。
ようやく辿り着けた、その想いとともに見上げる先には大階段が両翼を広げるかのごとく左右へと伸びている。
正面に掲げられた絵画の中には穏やかな瞳の老紳士――運命の多重構造と血の魔力を説いた稀代の魔術師の姿が見える。
シェリー酒のような彼の瞳は、まるでこちらの魂までも見定めるかのように厳かだった。
けれど、私たちはひるまない。
これまで常識であり定説であり前提であったものを壊す瞬間を、今日この場所に定めたのだから。
この都市における魔術史の、根底を覆すために、世界に革命を起こすために。
魔術の才能も魂のエネルギーも神によってはじめから生まれながらにすべて血脈として定められているというその説を覆すために。
ここで起こることすべてが記録され、記憶され、受け継がれることも知っているから。
違和感に気付いた仲間たちと、私はこれから『世界』から課された試練に挑む。
その成功を私たちは疑わない。
了
◆6-24-2インペリアルトパーズ
石言葉:友情・希望・直感
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Facebookにて、オーダーメイド物語の新メニュー考案のために募集したモニター企画でした。
オーダーメイド物語としては初のお手紙方式(郵送)でお届けです。
運命のダイスを転がした結果の鉱石をモチーフとした、少し不思議な500文字の物語。
物語とリンクする形で、鉱石イメージのインクを使い、
ガラスペンでミニカードに「鉱石の囁き」を綴っております。
*ミニカードの内容はこちらでは非公開としています