【オーダーメイド物語】誕生日の物語#17
最前線で指揮に立つ自分の鼻先を不可思議な香りが掠め、耳朶が神の息吹たる鐘の音を捉えた瞬間。
地底湖を抱く断崖一帯を覆い尽くし、昼となく夜となく君臨し続けた白い闇がゆるりと溶けだし、地表の亀裂に身を潜めた幻獣“玄武”の姿をあらわにして見せた。
絶滅危惧種とされたヒト族の存亡をかけた無謀ともとれる悪足掻きは、よほど、天上に座す神の心をつかんだのだろう。こちらへの肩入れを決め、最強種たる幻獣は降板を命じられたのだ。
「幻獣の結界は破られた! いまだ!」
魔導師たちによる遠距離からの一斉射撃に乗り、精霊憑きの援護を受けながら剣を振りかざし突撃する剣士たち。
幻獣が咆哮を上げて身を捩るが、万が一にと盤上に伏せていた罠をこちらが発動させれば、大掛かりな落盤と魔法陣による捕縛が、反撃はおろか、逃走すらも封じて見せる。
なるほど、神が戯れに自分へ与えた“遊戯箱”から創り出されるものは、これほどの効果を発揮するものなのか。
この地を支配する幻獣がヒト族により駆逐される――この、ありえないほどの幸運、数えきれないほどの偶然の折り重なりあいこそ、神が自分を新たな戯曲の主人公に定めたことの証左なのだと確信した。
*誕生石・誕生日花*
アンバー:夢の実現
真珠:健康・長寿・富
ムーンストーン:富
タイム:勇気・活動力
Copyright RIN
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▶︎誕生日の物語とは?
あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
正式なリリースの前にFacebookでモニター募集させていただいた34編を順次公開いたします