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★鉱石の囁きを閉じ込める物語#10

グランディディエライトの囁き

天穹を映す鏡のように澄んだ海の上を、列車はときおり汽笛を鳴らしながら水しぶきを上げて走り続ける。
 行き先は遥か彼方――故郷を後に、遠く遠く、どこまでも遠く、私を未知へと運んでくれるはずだ。
大切な人がいて、その人のために何もできないことがもどかしくて。
大切な人のために何かしたいと願い続けた夜の果てに、私はこの列車の汽笛を耳にし、そして気づけばここに乗り込んでいた。
運命を映す泉の結晶を燃料に、この列車は無数に枝分かれしたありとあらゆる未来の中から、その人が真に望む場所へと運んでくれる。
けれど、その望みが何かを掴めなければ、永遠に望む場所にはたどり着けない。
だから、迷子になってしまわないように、私は私の目的を丁寧にくりかえし胸に刻む。

ふと気づくと、私の隣の席では、小さな箱を大切そうに膝に抱える少女がふわふわとこぼれるように囁くような声で歌を口ずさんでいた。
それが聖歌だと気づけたのは、彼女のまわりに祈りの光が見えたから。
 かつて目にしたあの人の光と同じものが見えたから。

私は少女の歌に耳を傾けながら、私の内側へとそっと降りていく。
あの人のために何かをしたいと望み踏み出した私の一歩は、誰かのためにと祈る少女の歌に後押しされる。

◆4-15-1グランディディエライト
キーワード:予知、冒険、未来

Copyright RIN

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Facebookにて、オーダーメイド物語の新メニュー考案のために募集したモニター企画でした。
オーダーメイド物語としては初のお手紙方式(郵送)でお届けです。
運命のダイスを転がした結果の鉱石をモチーフとした、少し不思議な500文字の物語。
物語とリンクする形で、鉱石イメージのインクを使い、
ガラスペンでカードに「鉱石の囁き」を綴っております。
*カードの内容はこちらでは非公開としています


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