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【小説】天国と地獄の(異世界?)生活

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高校二年生の夏休み。 絲色 宴(いといろ うたげ)、墓終 結空(はかおわり ゆあ)、薇 字名(ぜんまい じな)、そして教育実習生の琴石九 留見(こといしく るみ)の四人は、共にそ…
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#墓終

【第0章|四人と夕陽と(空飛ぶ?)乗り物】〔第0章:第2節|薇字名〕

『後ろ!』
 物心付いた頃から、わたしの頭の中では声がしていた。
 声と言っても、わたしの声なのだから、これはきっと、一般的には「理性」と呼ぶ精神を指すのだ。そしてわたしはその理性を、どうしても静かにさせられない。
 理性。
 記憶や推測や経験に基づいて冷静に、的確な指示や感情の整理を手助けしてくれる、一種の思考システムの事。……だったはず?
 一般的には良い言葉で、だから今回もわたしより先に、危

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【第0章|四人と夕陽と(空飛ぶ?)乗り物】〔第0章:第1節|絲色宴〕

 八月二日。
 夏休み真っ只中。昨日は出校日。
 空模様は橙色に変わり、そのギラつきが貫くような射光へと変わった頃。
 誰もいない、強い陽光に照らされて黒い影が浮いたような廊下を、幼児の戯れのように影だけを踏み歩いていた僕は、前方に気配を感じるとすぐに顔を上げた。

「「アっ!!」」

 すぐに気付けたが、間に合わず。
 鼻に衝撃。
 思わず仰け反る。
 半秒ほど遅れてくる鈍痛。同時に、押さえよう

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