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『tick, tick...BOOM!』感想
プレショー
まず、会場に入って聞こえるのは、チック…チック…という音。
初見の時は分からなかったけれど、2回目以降だと「これがジョンの中でずっと鳴ってる音なのか…」なんて想像しながら見ることができるのもいいよね。
開演15分前ごろ、ジョン(薮宏太)の1人芝居から舞台は始まります。
ラジカセのカセットをガチャガチャしながら選んだり、足でトントンとリズムを取ったり、ベッドで足をフルフルしたり、マリファナの煙で遊んだり、仕草が子供っぽい。ジョンのまだまだ大人になりきれてない感じを表現してるのかな、とか思ったり。
あとここ、ちゃんと香りがするのもすごい。香りはちょっとタバコっぽかった。そして、薮くんの肺活量すごくない?マリファナの匂いをかいでるのもいいねぇとか、ここはそんなことも考えながら見てました。( ˘꒳˘ )スンスン
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30/90
さて、ここからが舞台の本番です。
「20代を楽しみたい」「おい時間を止めてくれよ」「なにか見つかるまで」なんて歌っていて。
30歳を目前にしてまだ何も成し遂げられてない!と焦るジョンの気持ちが伝わってきますね。
出だしから色んな人に刺さる歌詞とキャラクターだなあと。時代は違えど、誰しもこういう焦りを抱えながら生きてるんじゃないかなと思うので。
それから、自分の夢を諦めてビジネスで成功しているマイケル(草間リチャード敬太)と、ニューヨークで夢を叶えることを諦めて、田舎で少しゆっくり暮らそうと考えはじめるスーザン(梅田彩佳)と。
ジョンの大人になりたくない気持ちや夢を諦めたくない気持ち、よく分かります。
でも、マイケルのように夢を諦めて現実と向き合わなければいけけない気持ちも、スーザンの仕事の夢を諦めて自分の人生の夢を叶えようと動き出す気持ちも、全部分かってしまう。
だからつい、今回の舞台は主要キャラクター全員に感情移入してしまいますよね。
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Green Green Dress
ジョンとスーザンと屋上のシーン。
本当の試練に出会っていないから、変化がないのかも!なんて語るジョン。わかるよ、時代とか自分以外のせいにしてしまいたくなる気持ちもね。そんなジョンに明るく寄り添うスーザン。やさしくて、素敵な子だよね。
ところで、ここの身長差ヤバくない?ジョンのジャケットにすっぽり仕舞われちゃうスーザン、めっっちゃかわいい。たまらない身長差。
小柄な梅田さんと高身長な薮くん、あまりにも最高の組み合わせ。ときめいちゃうよね。
夢を叶えたい、でも、夢は人生食い尽くす。人生の残りの時間は刻一刻とと迫ってきていて。
マイケルのように、スーザンのように、「自分を捨てれば輝けるの?」「決められない」と思い悩むジョン。
いつまでも夢を追いかけ続けるわけには行かない、大人にならなくちゃ、なんて悩んでしまうのにも共感してしまって。それぞれに暮らしや人生があるから、決断を下すのは難しいし、勇気がいるよね…
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Sunday
ジョンが勤めるカフェでのシーン。
ここのリチャードくんと梅田さんの役の切り替え、本当にすごい!主要キャラクターとは全くの別人に見えてしまうくらいの演技力…!!
それからここ、口パクかと思っていたのですが、ちゃんと2人で小声でお話していました。びっくり!ヒソヒソ話しててかわいい。結構お口は悪いけども…笑
そしてここのリチャードくんに驚愕したんですよね。テーブルに仰向けになって足をバタバタさせながら、普通に歌う。高らかに歌う。
リチャードくんが簡単にやってのけるから分かりづらいのですが、あれで声が全く揺れないって本当に凄いと思います。感動。
リチャードくんの歌をしっかり聞いたのはこの舞台が初めてなのですが、感動してばかり。月並みな表現ですが、歌もダンスも本当に上手で。この舞台を見に来て良かったなと思ったことの1つでした。
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Therapy
ジョンとスーザンが喧嘩しているシーン。
自分のところに会いに来て!と、ジョンに電話を寄越すスーザン。翌日のこともあって行くかどうか悩むジョン。それにスーザンもイライラしてしまって…
喧嘩のシーンではあるのですが、でもここ、私はとてもお気に入りの曲です。ジョンのちょっと情けない表情や歌声、スーザンの強気で力強い歌声、2人の掛け合い、などなど。どれをとっても良い。
歌やダンスはもちろんだけれど、2人が自分をさらけ出して正直にストレートに感情を伝えあっているのも良いですよね。
あとここのリチャードくん、かわいいなとおもって。リチャードくんが、ジョンとスーザンを繋ぐ電話線を持ってきてくれるのですが、絡まらないように真ん中を持っててくれるんですよね。それがなんだか可愛くて、ついつい見ちゃいました笑
それから、梅田さんの動きが凄い!!電話線に絡まりながら歌って移動しなくてはならないのだけれど、ここのシーンはヒール履いてるんですよね。でも転ぶ気配ゼロ!ついつい、梅田さんの足元を見てしまいました。すごい。
あとね?ここ、ジョンがスーザンをおんぶしてくるーんってするのだけれど。薮くんが梅田さんを軽々おんぶして降ろすので、心臓がウッとなった。ときめきシティ……🤦♀️
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マイケルの職場に顔を出したジョン
クリエイティブな仕事だと聞かされて、マイケルの職場に連れていかれて大失敗したジョン。そんなジョンと車に乗りこみ、声を掛けるマイケル。
ジョンは会議をバカにしたけれど、マイケルは、「お金を貰ってるからだよ」「これはリアルな人生なんだよ」と諭します。
マイケルは夢を完全に置いて、現実を生きているんですよね。3人の中でマイケルが1番リアルな人生を歩んでいるんだろうなって。
マイケルは色んなものを手に入れはしたけれど、彼の捨てたものや諦めなくてはならなかったことはきっととても大きくて。
好きだし楽しいけどプロにはなれなかったから諦める、それも人生における大切な選択で。マイケル自身が選んだ道とは言え、見ていて苦しかったです。
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スーザンの決意
試演会から帰宅したジョンを待っていたのは、荷造りをしているスーザン。自分のこれからのために旅立つ決意を決めて、それをジョンに伝えます。でもやっぱりまだきっと迷うことはたくさんあったのかなって。
ジョンのこれからを心配していたり、今日は一緒にというジョンの言葉を振り切る声が震えていたり。でも、スーザンを抱きしめるジョンとは反対に、そっとジョン押し返すスーザン。そこでやっぱりこの気持ちは揺るがないものだったのかなとも思ったりして。
ここも胸が苦しくなってしまって、泣いてしまいました。
夢を追いかける中で、スーザンは少し疲れてしまったのかなって。だから、誰とも競わずに家族で暮らしたいって思ったのかなって。
夢を叶えるってことは誰かと競い続けるってことだから、そこもまたきっと彼女にとっては苦しかったのかも。スーザンもきっと、優しい子なんだろうね。
「自分たちの関係はもう見えてる、バラバラになってる気がする」とは言うけれど。ジョンが自分自信に幻滅してしまうのが心配だし、失望して欲しくない。って思ってるのも優しすぎるよね…
優しすぎるスーザンには、やっぱりあの街は意地悪だったんだろうね。だから、別の土地で新たにやっていくのもきっと、彼女にとっては凄くいい選択なのかも、なんて。
でもスーザンにも夢を叶えて欲しかった気持ちもあったりして。でも、何もかもを叶えるのは難しいよね…
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Come to Your Senses
試演会当日。
まずは、ジョンと父のやり取りについて。
物語序盤でも言い合っていた、「多少の雨は我慢しろよ」「虹が見たいならね」という言葉。
初見時、ジョンの父は成功している兄弟とジョンを比較する嫌な親なのかと思ってしまったのですが、実際は違っていて。自慢の息子だとも言っていたし、父親なりの心配の形だったんだろうなと。 ジョンと両親との関係も良いなぁと、ここでまたして涙。
さて、ここでカレッサの歌ですね。
梅田さんの力強く、でも美しい歌声がぴったりの歌詞でしたね。1番はカレッサとして、2番はスーザンとして歌っていたのかなぁ、なんて思ったり。
「守ってるだけじゃ進めない」ね、それはそうなんだけど。やっぱり人生を掛けたことだし、なかなか難しいことだよね。でも前に進み続けることが人生で、止まったらそこで終わりなんだよな、とか色々考えながら聞いてました。
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マイケルからの叱責
自分の人生を掛けたミュージカルも大して評価されずに自暴自棄になってしまう、そんなジョンの気持ちもよく分かって。
夢を捨てる!また年取ってやりたくなったらやればいい!!ってなっちゃうのもわかる。その方が楽に生きられるから。
自分を諭すマイケルに、「恐怖の何がわかる?」と問いかけるジョン。でもマイケルは、マイケルはHIVに感染していて。それでも恐怖をコントロールして、ジョンを気にかけ続けたよね。
きっと早く伝えたかったけれど、ジョンには言えなかったよね。大変な時期のジョンに心配をかけてしまって、何かあったら大変だと思ったんだろうなって。マイケル優しいから。
HIVの事がなければ夢を諦めようとも、スーザンのような形で将来を過ごす事もあったかもしれないのに、なんて考えると苦しくて。
仕事のこと、夢のこと、身体のこと、こんなに自分のことでいっぱいいっぱいの状況なのに、自暴自棄にもならずに親友のジョンを気にかけ続けていて。
優しくて強くて、マイケルは本当にすごい子だよ。マイケルにもおじいちゃんになるまで、楽しく元気に、幸せになってほしかったよ…
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Why
自分と向き合うジョン。
マイケルの病気を知って、自分の過去を見つめ直すジョンの演技、動きにも声にも思いがこもっていて、とても素敵で、見ていて一緒に泣いてしまいました。
「目を覚まして 守ってるだけじゃ
何度も上手くできるまで
俺はなんて幸せだったんだろう
今誓う これからもそう
ずっとこうして生きてゆく 生きてゆこう
30がなんだ 大丈夫
気にすんな 仲間がいる 」
という歌詞がとても良くて、もう涙が止まらなくて。目からスーって涙が流れて止まらなかった。ジョンの歌に薮くんの想いが乗っているのが伝わってきて、泣かずにはいられなかったです。
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誕生日当日
スーザンからの贈り物は、1000枚を超える五線紙の束。離れてもジョンの夢を応援しているよってメッセージみたいな気がして、スーザンのことを思うと胸がいっぱいになってしまったよね。
「寂しいよ」「私も」なんて話しながら、こんなにもお互いを泣きそうに、愛おしそうな目で見つめているのに…と思ってしまって。
自分の夢も暮らしもあるから、ずっと一緒は難しいかもしれないけれど、最期まで2人で幸せでいてほしかったよ…
マイケルからは、3本のベルトが贈られて。その理由が、「人生を肯定してくれるから、お前にも味わって欲しくて」だったのがね、また優しくて。思わず泣いてしまいました。
マイケルは本当に本当にやさしい子なんだろうなって。どうしてこんなにいい子なのに、病気で苦しまなくちゃいけないんだろうってびしょびしょになりました…
そして、憧れのスティーヴンからの最高の誕生日プレゼント。彼から電話が掛かってきて、自分の作品を直接褒められて。
それがなんだか私まで嬉しくて、また涙が止まらなくなってしまって。ジョン、本当に良かったね…おめでとう……
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さいごに
今回のミュージカルは少し前の時代の物語ではあったけれど、現代の私たちでも共感できることがとても多い内容だなと思いました。特に、ジョンと同じ年頃の20代後半の子達には凄く刺さる内容ですよね。私も刺さりました。
私ももうそんな年頃なので、色々決めなくてはならないこともやっぱりあって。逃げたい、考えたくない、大人になりたくない、なんて恥ずかしながら思うことが度々あって。
だからこそ、そんな環境でそれぞれ選択を既に終えていたマイケルや1歩踏み出そうとしているスーザンが凄いなと感じました。ジョンが葛藤していたように、容易なことではないから。
でも、何度もチャレンジしたり、歩み続けなくては何も変わらなくて、止まってしまうからね。まだちょっと難しいけれど、私もジョンのように、少しずつだけれど、歩み続けていきたいなと思いました。
こんなに登場人物たちに共感して、自分の中で考えたりしてミュージカルは初めてだったかもというくらい、自分にとってはとても素敵なミュージカルでした。出会えてよかったです。
薮くん、リチャードくん、梅田さん、関係者のみなさま、素敵な時間をありがとうございました。