映画「トンマッコルにようこそ」(2006年公開)
個人的所感によるあらすじ
1950年代、朝鮮戦争が続く中、戦争とはまるで無縁の平和な村が山奥にあった。その名はトンマッコル。そんな村へまるで導かれるように、アメリカ人パイロット、韓国軍の2人、それに敵対する人民軍の3人が迷い込んでくる。顔を合わすなり、銃を持ってにらみ合う両者だが、銃や手榴弾を見たことがない村人たちは呑気なもの。偶然から村人たちの食料貯蔵庫を爆破してしまった兵士達は、ひとまず協力して村人たちの畑仕事を手伝うことに。
やがて心を開きあい笑顔を取り戻していく兵士達。けれどもその頃、トンマッコルに重大な危機が迫っていて・・・。
ちょっとネタバレな感想
文字通り、腹を抱えて笑った。
そして、最後に涙が止まらなくて困った。
鼻水をすすりながら電車に乗ったのは初めてかも知れない。
不思議な顔をした等身大の道祖神(守り神?)に守られたトンマッコルの村に迷い込んだ6人の兵士達。銃さえ見たことのない村人達に彼らの常識も脅しも通用せず、繰り広げられる珍妙なやりとりはまさに抱腹絶倒もの。
けれども、見ているうちにだんだん思えてきてしまうのだ。
どちらの常識が”本当に正しいのか”と。
人を疑うことを知らず、仲良く平和に幸せに生きているトンマッコルの人々。
敵を見たらやられる前にやってしまえと無意識に思ってしまう軍人達。
補給路をたたれたら戦争が長引くと、その地域への被害はしょうがないなどとほざくアメリカ人指揮官は、考えればやっぱり異常だ。その思考回路のバカバカしさが本当に自然に感じられてくる。人に向かって爆弾を落とすことがどれだけ酷いことなのかをしみじみ実感できる。
どこかの大国の馬鹿な戦争好きの大統領や兵器は必要悪だと言って憚らない軍事関係者にこの映画を見て頂きたいものだ。
風に舞って空から落ちてくるポップコーン。
見渡す限りの草原で滑り落ちていく草そり。
広い広い畑と青々と茂った作物と村人達の笑顔。
たくさんの明かりに囲まれて歌い踊る祭の風景。
なんて美しい世界なのか。
これ以上必要なものなんて、きっとない。
久石譲の音楽も、ファンタジックな美しい映像と相まって『千と千尋の神隠し』の実写版を見ているかのような錯覚を覚える。
勝手な理屈で乱入してきた軍人に殺されてしまう少女。村を守るためにたった5人で立ち向かう兵士達は涙なくしては見ていられない。そのうちの一人がいう『オレ達、南北同盟軍ですよね?!』というセリフの通りにできるなら、こんな馬鹿なことは起こらなかっただろうに。
爆撃の中で最後に見せる満足そうな笑顔は、村を救った喜びだったのだろうか。それともそれまでに犯した罪を償えたのか。
できるなら、彼らがもう一度トンマッコルに生まれ変わって幸せに暮らせるように祈ってやまない。
そして、今のこの世界の中にもひっそりとこんな幸せな場所が残っていると信じたい。