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映画 「東京家族」(2013年公開)

個人的所感によるあらすじ

瀬戸内海の小さな島で生活している平山周吉と妻のとみこは、子供たちに会うために東京にやって来た。
二人は個人病院を開く長男・幸一の家に滞在。美容院 を営む長女・滋子、
舞台美術の仕事に携わる次男・昌次も集い、家族揃って食卓を囲むも束の間、忙しい日々を送る彼らは両親の面倒を見るのをだんだん嫌がるようになり、ホテルに宿泊させようとする。
周吉は寂しさを覚え、やめていた酒を飲んで騒動を起こしてしまう。
そんな中、昌次のアパートを訪れていたとみこがご機嫌で帰ってくるが、その直後...。

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ちょっとネタバレな感想

小津安二郎の名作『東京物語』をモチーフに、設定などを現代に置き換えて家族の絆を描いた作品。橋爪功、吉行和子といった大ベテランに、妻夫木聡や蒼井優という若手トップまで、巧みなキャストも相まって現代ならではの作品に仕上がっている。

特にベテラン橋爪功、吉行和子が凄すぎる。
経てきた時間や過去まで容易に想像できる演技。
特に二人で並んでホテルの窓から見えるライトアップされた観覧車を見ているシーン、もうこれだけでこの夫婦の絆と、いい意味での枯れた関係を感じさせる。

夫婦ってこんなもんだよね、という凄味は、子供たちカップルにはとても太刀打ちできない、リアルの勝利だ。昭和はこんなお父さんばっかりだったよね、とたぶん誰もが具体的な誰かを思い浮かべただろう。
だからこそ、この結末の切なさなのだろう。ほんの少しの甘えが、取り返しのつかない後悔を生む。

けして邪険にしているわけでも愛していないわけでもないのに、親という絶対的なものに甘えて生活を優先してしまう子供たち。
これが家族の現実なのだろう。こんな悲劇は、消して珍しいものではない。

けれども反面、やはり周吉ととみこは恵まれていたと思うのだ。
周吉の友人の言う「子供たちが立派になったから」ではなく、ちゃんと子供たちに甘えられていたのだから。

必要とされないことは、たぶん一番寂しくて辛いことだ。
そんなことは十分わかっているのだろうけれど。

行きは二人でも帰ってきたら一人。
「東京には二度と行かん」と言う周吉が、ただただせつない。

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