映画「ダニー・ザ・ドッグ」 (2005年公開)
個人的所感によるあらすじ
5歳の時に誘拐され、戦う為だけの闘犬として育てられたダニーは、高利貸しのバートに連れられ、取り立てと闘いに明け暮れていた。首輪を付けられ、感情さえも忘れていたダニーは、ある日、事故で視力を失ったピアノ調律師、サムと出会う。数日後、バートとダニーが乗る車にトレーラーが突っ込んでくる。大ケガをしたダニーはサムに助けられ、サムと、サムの娘ヴィクトリアの元で暮らしながら、次第に人間らしさを取り戻していくのだが、死んだと思われていたバートは生きていて・・・。
ちょっとネタバレな感想
リュック・ベンソン作品。彼の作品は「TAXI」とか割といっちゃってる系が多いので、ちょっとどきどき(マイナスな意味で)していたのだが、その心配は杞憂に終わった。
予定調和なストーリー、結末にも関わらず、いったいどうなるのかつい手に汗握ってはらはらささせられる。アクションが練りに練って洗練しているのが一番の理由だろう。
荒削りだった「ニキータ」(でも好きな映画)や説明不足の「レオン」(でも大好き!)から鑑みると、随分魅せ方がうまくなったものである。相変わらず突っ込みどころは満載だけど、それがほぼ気にならないところまで昇華しているんだからね。(笑)
ダニー役のジェット・リーが何てったって素晴らしい。1963年生まれって、はっきり言ってびっくりだ。どう見たって二十歳そこそこの若者にしか見えない。十八歳の設定の制服姿のビクトリアと並んでまったく違和感がないのだから恐れ入る。
もちろん、若く見えるだけじゃない。映画の最初の方はまるで本能のままの動物にしか見えないのが、だんだんと人間味を増してきて、それに伴って魅力的になっていく。おどおどした怯えた小動物の目があまりに印象的なので、自分がサムの家族として迎えられていると理解したときの笑顔はこちらまでうれしくなるほど。目の演技が卓越した役者さんだ、と改めて思う。
特に首輪をはずすときの演技は、観ながらついはらはらしてしまった。
それに加えてアクションシーンの素晴らしさ!
さすが少林寺でデビューしただけある。
対するサム役のモーガン・フリーマンの演技もいい。盲目という設定で全編サングラスをかけたまま、表情での演技は難しい役なのだが、体全体から愛情があふれ出すようなサム像はお見事。個人的にはミリオンダラー・ベイビーのフリーマンより好きだ。
養女役のケリー・コンドンという女優さんは知らなかったが、なんとなくアメリを思い出すコケティッシュさがなかなかかわいい。わかりやすい美人さんじゃないけど、それがかえってどこかあたたかな雰囲気を出すことに一役買っていたように思う。
見終わって「ニキータ」をリメイクした「アサシン」をちょっと思い出した。突出してこれ見よがしなものはない。けれど魅せるための、楽しませるためのポイントは押さえている。そんな映画ではないだろうか。
リュック・ベンソン作品としては、珍しく(苦笑)バランスがとれているんじゃないかな、というのは個人的感想。でも、アクションが好きな人も、泣ける映画が好きな人も、それぞれ楽しめるポイントは多いような気がする。