映画「インファナル・アフェアIII 終極無間」
個人的所感によるあらすじ
ボスの命令で警察に潜入したマフィアの手先ラウ。彼は今の生活を失わないために自分の正体を知る者を次々と消していく。けれど、ラウとは逆に警察官でありながらマフィアに潜入していたヤンを手にかけたときから、彼の世界は崩れはじめていき...。
ちょっとネタバレな感想
香港ノワールの傑作シリーズの三作目。
あの頃、これで香港映画にはまったという人も多かったのではないだろうか。
出演している俳優はもちろんだが、画面もストーリーも空気でさえもが、このうえなく『色っぽい』。
美しき男性を愛でるという意味でも、今のアジアンビューティメンの先駆けだったように思う。
確かに彼らは美しい。
だとしても、なぜこんなに色っぽいのだろう。
理由はたぶん、この映画が終わりない苦しみ、あえていうなら救いのないお話だからではないかと思う。たくさんの秘密をかかえて、本当の自分と反対の人生を生きえう。周りの人間を欺き裏切ることを生業とした生活。
物語の中の誰もがそんな自分の境遇に対して足掻いている。けれどもあきらめきることもできない。ただただ、もがいて望んで絶望して、でも足掻くこともやめられない。たくさんの秘密を文字通り命を燃やしてかたくなに守る男たち、命の叫びだから色っぽいのだ。
「終極無間」とは仏教の無間道からとった言葉らしい。
終わらない苦しみ、永遠の地獄。
「善人になりたい」、ただそれだけを望んだラウを心から責められる人間は、この物語の中にはいないに違いない。誰が味方で、誰が信用できるのか。追いつめられた彼は最後の大勝負に出る。さらに永遠の地獄へと突き進んでいくのだ。
こんな男どもに惚れてしまったら、女にとっても地獄だろう。
しみじみ救いがない。けれども強烈に惹かれる。