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三十一煎目:琉球漆器と大和(日本)の漆器に違いはありますか


海外では「JAPAN」(ジャパン)と呼ばれる漆器。漆器は日本特有の文化です。沖縄の漆器とそれらに違いはあるのでしょうか。

そもそも漆とは

漆はウルシの木から取れる樹液のことです。絞ったままの「荒味漆(あらみうるし)」を漉して不純物を取り除いた漆を「生漆(きうるし)」と呼び、さらに水分を蒸発させたり精製したものを指します。

なお、生漆はベージュから半透明の色で、そこから精製の際に鉄分を入れることで黒い漆ができます。よくイメージされる赤い漆は、赤い顔料を混ぜたものです。

うるしの木は育つまでに10年以上かかります。そして1本の木から採取できる漆は約200gほどといわれます。

歴史的背景と文化的影響の違い

琉球漆器

琉球漆器は、15世紀から16世紀にかけての琉球王国時代に発展しました。さらに、漆器を制作するに適した環境と技術の発展を経て、中国や東南アジアとの貿易に重要な品として珍重されるようにもなりました。

しかし、沖縄特有の亜熱帯気候、特に夏の高温と乾燥がうるしの木にとっては過酷でもあり、うるしの木(ウルシノキ、Rhus verniciflua)の生育は難しかったようです。そのため使用する漆は、主に中国や台湾、アジアなど海外から輸入された漆を使用していました。つまり材料を輸入し、それを加工して輸出していたわけです。

大和の漆器

日本本土の漆器は、数千年の歴史を持ちます。日本各地でそれぞれ独自の技術の発展を遂げており、漆器で有名な石川県だけでも輪島塗や山中塗など複数の漆器が、その他にも会津塗(福島県)、津軽塗(青森県)、若狭塗(福井県)、京漆器(京都府)などがあります。日本の中でも実に30を超える産地で漆器が作られています。

縄文弥生時代には土器や農耕具、漁具など生活するための道具に漆を使用していたともいわれています。飛鳥・奈良時代になると、仏教の伝来とともに仏具などに多く用いられるようになります。さらに鎌倉時代になると貴族の食器や武士の武具、江戸時代になると各地の特産品として発展していきました。
さらに、明治になると海外からの高い評価を受けてより発展していきます。

製法とデザイン

琉球漆器

琉球漆器は、中国や東南アジアの影響を受けた色彩豊かなデザインが特徴的です。特に、黒い漆に螺鈿細工を施した黒漆螺鈿や、朱漆に沈金(ちんきん)や箔絵(はくえ)、堆錦(ついきん)といった多くの技法で華やかな見た目が特徴的と言えます。

大和の漆器

日本本土の漆器は、落ち着いた色合いや、純粋な漆の艶を生かしたシンプルな美しさが特徴です。蒔絵(まきえ)や沈金(ちんきん)などの緻密な技法で繊細なデザインが施されることが多くあります。

琉球漆器と大和の漆器の違いは、それぞれの地域が持つ歴史的、文化的背景に深く根ざしています。琉球漆器は色彩豊かで東南アジアや中国の影響を受けたデザインが特徴的であり、大和の漆器は日本独自の伝統美を重んじた落ち着いた色合いと緻密な技法が特徴です。
どちらも日本の伝統工芸品として高い芸術性と技術を持ち、異なる魅力を放っています。

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