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【76】北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周 26日目 江差〜落石〜八雲② 2019年4月28日

桧山の海岸線を北へ走る「週末北海道一周」26日目。冬の続きのような凍える風雨が去り、北国の春の恵みを全身に感じながら、前日の疲れの残る身体で、よたよたと走っています。

▼ 「週末北海道一周」、ここまでの記録はこちらです。


◆ 元和海浜公園の春

館の岬の基部をトンネルで抜け、しばらく渚を走って次の台地に登ると、そこは路傍に桜が咲き乱れ、その奥に小さな社のある美しい場所でした。

桜前線は青森で梅前線に追いつき、津軽海峡を一緒に渡ります。道南の遅い春は、桜と梅が一気に咲き乱れる美しい春。
知識としてそのようなことは知っていましたが、実際にその季節に道南にいるのは、これが初めてです。
日差しは暖かく、このまま草叢でしばし横になって、昼寝したいような気分になります。

▲ 北国の春 …

小さな社で柏手を打ち、その奥にある展望台に歩みを進めました。元和海浜公園と名付けられたこのエリアは、断崖の下に遊歩道が設けられています。ベンチとテーブルもあるが、人影はありません。

▲ 元和海浜公園

昨日、一日中鈍色に沈んでいた海は、今日は藍に染まり、波が静かに打ち寄せています。
初めての桧山の海岸線の美しさは期待以上。
繰り返しになるけれど、ロングライドのコースとして、もっと知られても良いと思いました。

◆ 雲石峠を越えて

元和海浜公園の先は、麗らかな日差しを浴びて眠ったような漁村を巡って走りました。
やがて旧・熊石町との境界を過ぎました。その先は海辺の平坦な道。風も弱まってきたので、少し気合を入れて踏み込みます。日本海に突き出した岬をトンネルで抜け、見市川という川を渡る橋に差し掛かりました。遊楽部山から流れ出る雪解け水と川端の若葉の清冽さに足を止めます。
雲石国道への分岐点へはあとどれくらいかと思い、地図を見ると、何と、この橋を渡ってすぐのところです。この見市川の流れに沿って遡り、八雲へ向かうということらしい。
ここまで、昨日の疲れを引きずってグダグダの走りだったというのに、おやおや、もう終わりかと、少し呆気ない気持ちもします。

そう思うと、なにげないこの春の河口の風景がなんとも愛おしく、立ち去りがたいものに感じられました。
しばらくの間足を止め、瀬音と鳥のさえずりの中に身を委ねていました。

▲ 今回の中断地点 見市橋

清流に沿って2~3キロ内陸に入り込んだところから、雲石峠への本格的な登りが始まりました。北海道の峠道らしい、大きな弧を描く登りです。
今日のルートははっきり決めずに出発したので、この峠越えの下調べも全くしておらず、正直なところ舐めてかかっていたので、想定より急な勾配に少々気持ちが萎えました。
さらに、このような小春日和でも、4月の北海道の山間部はまだまだ冷え込みが厳しく、山腹は枯れ木に覆われていました。渓谷を渡る橋の上では、凍りつきそうな強風が山から吹き降ろし、結構なダメージをくらいます。
柱状節理のなかなか見ごたえのある岩壁なども見られますが、概して風景は平板で、何合目まで登ったかを示す路傍の標識ばかりが励みでした。

▲ 雲石峠への上りで

11時40分、休み休み上り詰めた427mの峠には、吹き飛ばされそうなほどの強風が吹き荒れ、熊笹が激しく騒めいていました。
ウィンドブレーカーを着込み、早々に八雲へのダウンヒルにかかります。

▲ 雲石峠頂上

雲石峠は渡島半島の中央部ではなく、だいぶ日本海寄りにあり、八雲への下りは長い道のりでした。最初数キロは路面の荒れた急な下り坂。その先は、渓流に沿ってダラダラとした下り基調の道が続きました。
次回は反対側からこの峠を越えて熊石にアプローチするつもりですが、これではスタート地点までに、体力よりも気力を使い果たしかねません。八雲から落石までのバス輪行なども考えねばならないでしょう。

ようやく長い下りが終わり、八雲の市街地に向かって明るく開けた牧草地の中を走っていくと、進行方向に、残雪に輝く双耳形の美しい峰が姿を現しました。
一昨年の噴火湾沿いのライドでは、ついに全容を現すことがなかった渡島駒ケ岳が、快晴の春の陽射しの下で輝いていました。

▲ 牧草地の彼方に見えた渡島駒ヶ岳

◆ 今こそ溢れぬ 清和の光

これで今回の行程は終了ですが、東京へのフライトまでに、時間はまだたっぷりあります。こんな素晴らしい日に、これで走り止めにするのはもったいない。

八雲駅前のネパール料理店でマトンカレーを食べながら調べると、ちょうど都合のいい時刻に函館行きの鈍行があります。そそくさと食事を済ませ、輪行準備をして、ワンマン運転のディーゼル車に飛び乗りました。
噴火湾の向こう側、優雅に裾を引く駒ケ岳の姿が刻一刻と大きくなってきます。

▲ 函館線の車窓から

一昨年の初冬に一夜を過ごした森で下車。西から強い風が吹いていました。
そのときの思い出に耽る間もなく再びバイクを組み立て、渡島駒ケ岳の裾野へ長い坂を、駒ヶ岳の雄姿を友に登ります。
大型連休で国道5号線は込み合い、特に大沼公園インターの数キロ手前からは大渋滞が発生していました。

▲ 駒ケ岳駅付近にて

国道と分かれて大沼のほとりへとくだり、大沼を一周する懐かしい道を、20年ぶりに走りました。

▲ 大沼湖畔で

前半は西風に背を押されて快調。後半は強い向かい風になり、函館行きの列車の時刻が気になります。しかしそれよりも、今日この日に、再び北海道へ走りに来られた幸運に感謝しながらペダルを回し、無人の大沼駅にフィニッシュしました。
バイクを輪行バッグに納めた後、夕暮れ迫る駅のホームで、もう一度駒ケ岳を仰ぎながら、心安らぐひと時を過ごしました。

▲ 大沼駅からの駒ケ岳遠望

一年のブランクを経ての「週末北海道一周ライド」は、札幌から走り始めた4年前の早春のような、春の日の北国の幸を愛しむ新鮮な喜びに溢れていました。
帰りの飛行機では運よくプレミアムクラスへのアップグレードもでき、ワイングラスを傾けながら、気持ちよく旅の余韻に浸ったことでありました。

札幌までは、あと330キロほど。尾花岬、茂津多岬、積丹半島など、豪快な海岸線をめぐる道。ここを3回ほどに分割して、11月初旬、北大キャンパスが金葉祭でにぎわう頃のゴールを目指すとしましょうか。

      *********

早春の道南から東京へ戻り、4月29〜30日と仕事。30日の深夜、タイへのダイビング旅行へ出発。
偶然なことに、わたしが搭乗したフライトは、深夜0時をまわり平成から令和へと時代がかわって、最初に飛び立つ便。搭乗口は祝賀モード。マスコミも押しかけて、ちょっとすごいことになっておりました。搭乗証明書と記念品の扇子をいただき、時代は令和へ。

▲ 令和初フライト@羽田空港

(第26日目 以上)

【本日の走行記録】
江差~八雲 (カッコ内は江差〜熊石)
・走行距離 71.9Km (38.6Km)
・走行時間 3時間05分(1時間36分)
・平均時速 23.3Km/h(24.2Km/h)
・獲得標高 931m
・消費カロリー 1609kCal

森~大沼周回
・走行距離 32.5Km
・走行時間 1時間27分
・平均時速 22.3Km/h
・獲得標高 276m
・消費カロリー 716kCal

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25日目は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

1年半ぶりで再開した「週末北海道一周」ですが、その後、世の中もわたしの身辺も、環境が一変します。再び雲石峠を越えて見市橋のたもとに立ったのは、翌年夏のことでした。宜しければ続きもご笑覧ください。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、そのほかの自転車旅や海外旅行の記録などを綴っています。宜しければこちらもご覧頂ければ幸いです。

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