【85】北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周 28日目 岩内〜余市② 2020年8月17日
2020年の晩夏、「週末北海道一周」最終レグ。
積丹半島を周回しています。濃霧の西海岸を北上し、絶景の神威岬へ。青空が広がり、見渡す限り積丹ブルーの海。
▼ 「週末北海道一周」、ここまでの記録はこちらです。
◆ お腹がすいた。
後ろ髪を引かれる思いで、神威岬の絶景に背を向け、駐車場に戻りました。
そろそろ正午、昼ご飯のことも考えながら走らねばなりません。
今朝はホテルの朝食を腹いっぱい食べてきたので、直ちにガス欠を起こす心配は無用でしょう。しかし、このような僻遠の地ですから、外食産業がよりどりみどりとはゆきません。
混雑する駐車場のレストハウスは忌避。
この季節の積丹といえばバフンウニ。半島の北西にある日司という地区に、ウニ丼を出す店が軒を連ねている、とツーリングマップに記載されています。
霧の層は陽光の中に消え、日差しがじわじわと暑くなってきました。
風がやや西向きに変わりました。背中に風圧を受けて、半島の先端部を東へ快走します。道はずっと渚に寄り添っています。所々にトンネルがありますが、数千メートル級の手強いのはありません。
ただ、神威岬からこっち、クルマの量が急に増えました。今日はお盆明けの月曜日ですが、サービス業や自営では、今日から夏休みの方も少なくはないのでしょう。
さすが北海道の日本海岸を代表する景勝地だけあって賑やかです。しかし今後、コロナによる渡航制限が緩和され、ここにインバウンドが加わってくると、宮古島あたりのようなオーバーツーリズム状態になってしまうのでは、と心配になりました。
途中、ウニや海鮮丼の幟が緩やかにはためく店がありましたが、店の前に数人の順番待ちの列が見られるし、この快走ペースを崩したくもなく、通過。
やがて、積丹国道は内陸に方向を転じます。積丹岬へ通じる道道が左に分岐していました。左へ車輪を進め、海岸線を辿ります。この隣の集落が、海鮮系のお店が軒を連ねているという日司地区です。
▼ 写真がないので、食べログのページより、この地区の魅力的な店々。
https://s.tabelog.com/hokkaido/C1405/C4419/rstLst/
ところが、短いトンネルを抜けて件のエリアに入ると、そこには駐車場からクルマが溢れるほどの喧騒が渦巻いていました。ウニ丼屋が並ぶ、とツーリングマップには記載されていますが、店の数は三軒、しかもそのうちの一軒は本日休業で、残る2軒の前はそれぞれ20人はくだらないかという長蛇の列。
しばし、集落内を往復しながら思案し、山の方に入り込んで他に店がないか探して見たり、うろうろしました。
様子を見るに、このまま行列に並んでも1時間以上待つ覚悟が必要と思われるし、お店側もてんやわんやで、落ち着いて食事できる雰囲気ではなさそう。
かといって、ここを通過すると、この道道沿線には飲食店が2軒ほどしかないようで、しかも状況はおそらくここと同じ。
その先、東海岸の美国まで行けば、多少の選択肢はあると思われます。飲食店はダメでもコンビニはあるので、ウニ丼はともかく、最低限空腹はしのげます。美国まではあと20キロあまり走らねばなりません。しかし、ここで行列に並んでいるうちに到着できるのではないか、という雰囲気でもあります。
思案の末、先へ進むことにしました。
一昨日の函館朝市の刺身定食に始まり、毎食のように、旬の魚介を堪能しています。だから1食くらいラーメンやカレーライスだって構わないのですが、せっかく夏の積丹に来たんだから、という思いが働くし、それ以前に、この沿線にはそういう大衆食堂や昔ながらのドライブインも見当たりません。
◆ 島武意海岸
積丹半島の東側の角にあたる島武意海岸への登り口に着きました。ここも駐車場まで結構な激坂を登らねばなりません。
じわじわと空腹感が増し、気力と体力が湧かなくなってきました。
神威岬ほどではないものの、ここも大勢の観光客で賑やかです。駐車場の脇にレストハウスがありますが、ウニ丼をはじめいくつかのメニューは既に売り切れの様子。
駐車場にロードバイクを停め、徒歩専用のトンネルを抜けます。急斜面の中腹にある展望台に出ると、ここにもまた絶景が広がっていました。
学生時代に、ここへきたことがあるはずなのですが、爽やかな初夏の早朝だったという以外、全く記憶がありません。展望台から急斜面を波打ち際へ降りていく遊歩道があり、静かな浜辺に少なからず人影が見えていますが、そこまでの往復でハンガーノックを起こしてしまうのではと心配で、再びトンネルをくぐって引き返しました。
が、このまま積丹岬に背を向けてしまうのはもったいなく、急斜面を灯台まで登ってみます。岬をめぐる遊歩道は、ヒグマが出没したとのことで、灯台から先は通行止めになっていました。
ここからも、静かな積丹ブルーの海の広がりが望まれます。冬になれば凍るような波濤が容赦なく襲いかかってくるのでしょうが、そんな風景が想像できないほど伸びやかで美しい群青の広がりです。内陸に目を転じると、すっかり霧も晴れ、1200メートル級の積丹岳や与別岳の山頂が望まれました。
◆ 美国へ
再びロードバイクで走り出します。道道に戻ると、その先の道は、想定していなかった登り坂でした。
勾配はだいたい7%前後といったところ。気力体力が充実している時ならば、さほど苦にならない程度の登りです。
脚も十分残っているのに、腹が減って、きつい。
昼下がりの陽光は、内地のような厳しさはないとはいえ、じわじわと効いてきます。水分は十分に補給しているものの、水っ腹では力も出ません。
こういう時に備えて普段はバックパックに忍ばせているエナジージェルも、昨日全て消費してしまいました。
幅員は狭く、交通量も多く、平凡な混合林の中の上りは快適とは言い難い。
大して我慢を強いられるような厳しいヒルクライムではないのだけれど、ギヤを軽くしてエネルギーの消耗を抑えながら、よたよたと登りました。
上りは4~5キロほど続いたでしょうか。ようやく、牧草地の中の直線的な下りになり、積丹国道に再び合流。クルマの量もさらに増えました。
高原状の海岸台地上から、北海道では珍しい急勾配のヘアピンを、慎重に下ります。
海岸線まで降りたところが美国漁港でした。
時刻は既に14時を回っています。
ここまで来れば、食事を取れる場所が何箇所かあるし、コンビニもあります。ほっとした気持ちで、以前名前を聞いたことがある寿司屋の暖簾をくぐりました。幸い、カウンターが空いていて、すぐに座ることができました。
上にぎりを注文し、大将が握ってくれる端からがっつきます。本当はウニ丼と行きたいところですが、これは積丹半島といえどもお安くはない。一応、失業手当受給中の身でもあります。代わりに軍艦の上に乗った黄金の塊が舌の上で蕩けるのを幸福感と共に堪能しました。
◆ 水平線の彼方に…
寿司屋の前のコンビニで、麦茶や羊羹を補給し、満腹がもたらす幸福感と共に陽光溢れる美国の集落を抜け、海岸線に出ました。
見渡すと、水平線の上に、暑寒別岳の姿が見えました。
5年前の春、札幌を出て、南風を背に、あの山麓を巡って北へ走っていったのだな、と思い出します。
すると、ぐるりと北海道を巡って、ゴールに近づいてきたことが初めて実感され、同時に少し熱いものが胸に込み上げてきて、予期せぬ感情の変化に戸惑いました。
余市まではあと20Kmあまり。穏やかな午後の海を楽しみながら、海岸線を走っていきましょう。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
余市までもう一息ですが、その前に、どうしても立ち寄りたい場所があります。よろしければ続きもお読みいただければ幸いです。
わたしは、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、そのほかの自転車旅や海外旅行の記録などを綴っています。宜しければこちらもご覧頂ければ幸いです。
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