紅葉ピークシーズン:アフターコロナで日本人観光客が消えた
海外に住んでいると、日本に住んでいたら味わなくて済む苦労も多く、
「日本ほど美しい国はないのに、なんでこんな大変な思いをしながら海外に住んでいるんだろう」
なんて思うこともあります。
ですが、カナダ、特に東部に住んでて本当によかったと心から思える季節があります。
それが紅葉の季節。
9月の後半から徐々に色づき始めて、大抵10月の1週目から2週目にピークがやってきます。
カナダの紅葉は特にオンタリオ州やケベック州の森や山々が真っ赤やオレンジ色に染まって、まさに絶景。
この時期になると、普段は静かな街や村にも観光客が集まり、賑やかな雰囲気になります。日本からも多くの観光客が訪れ、カメラを片手に紅葉狩りを楽しむ姿が見られました。特に、紅葉の名所として知られるMont-Tremblantにある小さな町は、町全体がいわゆる映えスポットで、たくさんの日本人ツアー団体客が訪れていました。
普段町で日本語を聞く機会がほとんどない生活をしている私は、紅葉の季節にこの町に行くと聞こえてくるたくさんの日本語が密かにうれしかったのを覚えています。
しかし、近年その日本人観光客の姿を見かけなくなりました。
コロナによる自粛モードが完全に解けて、私たち家族も昨年の2023年、4年ぶりにMont-Tremblantへ足を伸ばしました。ところが、以前あんなにたくさんいた日本人の団体客がいません。その代わりに中国、インド、アラビア系の観光客で溢れ返っていました。
コロナ前とコロナ後で、顕著にその違いが表れているように思います。
私たちは観光客でごった返していたその雰囲気が好きになれず、今年は別の場所へ紅葉を見に行きましたが、最近その町に行ったという友人の話では、やはり同じ状況だったようです。
カナダ政府の統計によると、2024年の第一四半期には、アメリカからの観光客が430万人訪れており、カナダに来る外国人観光客の中で最も多くを占めています。一方で、海外、つまりアメリカ以外の国からの観光客数は約96万人でした。この数はコロナ前のレベルの約93%にまで回復しているものの、日本からの観光客はその中でも少数派となっています。
円安や海外物価高の影響、そして日本はやはり不景気なのだろうという現実。それに加えて、カナダの紅葉シーズンは短期間であり、見頃に合わせてスケジュールを組むのが難しいことも影響していると思います。
日本の桜と同じように、その年の気候によってピークシーズンが変わる紅葉観光。それでも高い飛行機代を払って見に来ていた日本人観光客ですが、今はその一か八かのものに大枚をはたく余裕がある人は少ないのかもしれません。
日本でも美しい紅葉は十分見られますが、広大な大地に広がるカナダの紅葉は日本のものとはまた別の美しさがあります。
例えば、オンタリオ州にあるアルゴンキン州立公園やケベック州のローレンシャン高原は、まるで赤やオレンジ、黄色の絨毯が一面に広がっているような景色が楽しめます。日本の紅葉は繊細で奥ゆかしい美しさがありますが、カナダの紅葉はスケールが違い、視界いっぱいに広がる鮮やかな色彩が特徴です。
湖面に映る紅葉や、山の上から見下ろす大自然のパノラマは、日本ではなかなか味わえない特別な体験です。秋の空気を吸いながら、大自然の中で色鮮やかな葉が風に舞う様子を眺めると、カナダの秋がいかに壮大で美しいかを実感します。
もし日本の皆さんが再びカナダを訪れる機会があれば、ぜひ秋の紅葉を見に来てください。その景色を一度体験すれば、カナダに住む私たちがこの国の自然の魅力に惹かれる理由がきっとわかるはずです。
参考サイト:Statistics Canada, Visitor Travel Survey 2024