![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/74646942/rectangle_large_type_2_c70257fb19f2687475e20ad75f97f677.jpg?width=1200)
都会と雨は、悲しみに暮れた時のコーヒーのよう。
おとといは久しぶりの雨。
いつもリュックにしまっている傘をさして、恵比寿LIQUIDROOMへと向かう。山手線は3分の遅れでさえも、「誠に申し訳御座いません。」というアナウンスと共にやってくる。
たまに東京に出てくると、こんなにもたくさんの人が暮らしているのかと思う。何をしている人たちかは、もちろん分からない。
SNSでは「これからは個人の時代だ」とよくみるけれど、歩く人たちは何者か分からないし、手に持つ傘はほとんど無個性だ。僕も例外ではなく、特徴や愛着を特に持っているわけでもない黒い傘を開いて歩く。
雨は憂鬱だ。せっかくのお出かけも、雨ひとつで台無しになってしまう。自転車でスーパーに行くことも、億劫にしてしまう。
雨は憂鬱だ。
でも、都会に出ると雨はいつもと違う表情を見せてくれる。
雨のおかげでいつもなら無機質な光は華やかで、歩くことが強要される街中でも足を止めてしまう。
いつもは嫌いな都会の街並み、いつもは憂鬱をもたらす雨模様。それらの掛け合わせは、闇が濡れるほどにとても綺麗だ。
-----
1人暮らしをしていると、前触れもなく悲しみや寂しさが訪れる。都会には自分の代わりがたくさんいると思えてしまう。
自分を自分たらしめるものを数えてみる。自信を持つにはあまりに少なくて、何者か分からなくなる。
そんなときにも1杯のコーヒーはふっと落ち着きをもたらしてくれる。香ばしい苦味にほんのり甘い風味が広がっていく。
そんな心に栄養を蓄えてくれる時間は、あまり多くないけれど、世界を新たに色づけてくれる。
都会の光を広げてくれた雨は、そんな瞬間に似ているのかもしれないと、そんなことを思ったのでした。
いいなと思ったら応援しよう!
![ヒグ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/92581668/profile_13c10c189e2f46732302809fea0798c4.jpg?width=600&crop=1:1,smart)