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「さんごじゅ」3号

「さんごじゅ」は「りとむ」から飛び出した短歌の同人誌です。このたび3号の刊行となりました!
編集や発送など大変な作業はお任せしてばかりなので、私に出来ること…つまり活動内容の広報を微力ながらしてみたいと思います!

今号は「色」をテーマにした評論・一首評・特集をメインに、同人の作品12首や連載コラムなど盛りだくさんです。

企画はどれも力が入っていますが、高橋千恵さんと堀まり慧さんが担当された特集Ⅰの三枝・今野両先生の全刊行歌集の色彩語彙統計集は、語彙の集積にとどまらず、各歌集の紹介としてもとても優れているので、ぜひお読みいただきたいです。

一首評なども読み応えたっぷりですが、文章はもう読んでもらうしかないので、作品12首から各同人の歌を一首ずつご紹介しましょう。(短歌の前にある括弧は詞書です)

その肌に触れれば痛みをともなうと恐れながらも指をのばしつ 天野陽子
灰色のボタンいくつもそろひ立ちリモコンはちさき墓地のしづもり 新木マコト

(田村元『北二十二条西七丁目』他)
幾杯のナカを加えてきたことかホッピーの泡を厚くしながら 岩内敏行
いつまでもならしておかう柚子の実は冬のさ庭のともしびだから 榎本麻央

香菜(シャンツァイ)はどこでも買える草となり山盛りにするアジアの熱気 北川美江子

(「を」)
「を」は「遠」を崩せる形 遠さとはあなたを思うための付属語 越田勇俊
エリザベス処女王厚きおしろいに乗り越えし一生の七難 笹谷潤子
とりあえずひとつをつかみ青蜜柑やりたいことは決めないでおく 里見佳保


車椅子に座る媼の上顎の奥歯を磨く腰を落として 高橋千恵
境内で大きな口を開けてゐるカバの遊具にはなびらが降る 田村元
しらじらと霞たなびきわれの知らぬ過去も覚えている足の骨 寺尾恵仁 
子には子の歳時記があり年明けの始業式にはスキーを運ぶ 樋口智子


流れゆく日日へ打ちたる読点のやうにときをり想ふひとりを 堀まり慧
月影のあたる横顔さっきまでふつうの人って顔だったのに 増田理恵
ホテルには冬のたくらみ静電気ためて金色のドアノブならぶ 松山紀子
いさぎよく葉を振り落とし立つのみの銀杏は冬の瞑想のなか 柳沼美紀


唐突にくさめをすれば驚いてジョウロを落とす老人に遭う 栁澤有一郎
裏返る文字ことごとく冷たくて活版印刷機には触れ得ぬ 山口文子
さやさやとうたの”夕暮れ”禁止令われ立ち惑ふ黄麦(わうばく)のなか 和嶋勝利

選をすると、自分の好みが炙り出されますが、これはもう皆さんに読んでもらってそれぞれの選をしてもらいたいですね。

「さんごじゅ」ツイッターでも各人の歌の紹介をしています。中の人の選はまた違うところもありますので併せてご覧くださいませ。

さんごじゅvol.3 テーマ「色(color)」 (@tobikiriakaki)さんをチェックしよう https://twitter.com/tobikiriakaki?s=09

あと、特集ⅡではLINEを使って連句をしました。奇しくも「短歌研究」の6月号でも同様の企画がありますね。
このご時世、オンラインで繋がれるのはありがたいことです。(この「さんごじゅ」の連句のころは、こんな世になるとは思いもしませんでしたが・・)
捌き手が居ないとちょっと進行が難しいという一面はありますが、他の人の発想に驚いたり、制約のなかで四苦八苦する楽しさがありました。

ということで、通販もありますのでどうぞよろしくお願いします!

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