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【連詩】『空が、』
(藤)藤由 (笠)笠原メイ
(藤)空が泣くのは誰のせい?
そんなことを考えていた
空が落とした涙に
ドロップと同じ名前を
付けた人は
きっとその甘さを
知らなかったんだと思う
空は相変わらず
寂しそうに泣いていて
切りすぎた前髪から
ぽたりと水滴が落ちた
前髪が短くなった
ただそれだけで
世界が変わる
そんな気がしてたんだ
曇りなどない
青空みたいなあなたを
そのまま掬うには
私の手は小さ過ぎたのに
舌先に落ちた雨粒は
やっぱり甘くなくて
私はもう
泣かないでよって
空と一緒に泣いた
(笠)黄色いレインコートを着て
3014丁目の映画館から登場したミシェル
洗剤入りのラムコークが降る町で
自分の名前を忘れてしまった
最後のキスは涙の味がした
それを思い出す度に景色が海に染まる
底に沈んでゆくドロップに手を伸ばすと
心臓の浴槽が狭くなる
街は濡れていた、本だった
瓦礫だらけの、楽譜だった
そして角を曲がるごとに
知らない歌が転がっていて
吸い殻入れに集めて歩き続けた
最後の最後に拾ったのは黒い羽根
カラスの羽根に見えたけど
よく眺めると天使のものだった
限りなく悪魔に近い天使の
(藤)不機嫌なセブンティーン
銜えたタバコのメントール
手に入らなかった愛を
ドロップのように舌で転がしてた
思い出すのはとても簡単 で
甘くもないハッカ味のそれがトリガー
何回舐めても溶けてはくれないから
忘れるのは難しい
閉じてしまった映画館
雨がアーケードの屋根を叩く
その音だけはいつも変わらなくて
あぁ、遅かったのだ
なんて今更ながらに気づく
指の隙間から雨がさらさらと落ちて
足元に泥濘を作った
浴槽に溜まる青は
より一層、青く
(笠)空が晴れたらあなたも笑うかな
そんなことを考えていた
涙が枯れたあとに見える
綺麗に澄んだブルーは
あの日、あなたにあげた
ドロップと同じ香り
でも口には入れない
二人はもう大人になったから
伸ばした前髪で隠れた
恐怖の世界にハレルヤを歌おう
魔法も奇跡もない
世界は変わらない
それでも
生きていくしかない
夏に抱かれて、秘密もない
青空みたいなあなたを
愛するには
私の胸は小さすぎたみたい
でも寂しくなんてない
やっぱり甘くて切なくて
良い思い出になんて
出来そうもないけれど
その笑顔に出会えてよかった
※藤由さんと共同で制作した連詩です。テーマは『ドロップ』です。直喩や暗喩を織り交ぜた、優しいけど鋭い、面白い詩になりました。
藤由さんのサイトでもご紹介して頂きました。
※追記。藤由さんが、詩と写真を合わせた画像を作ってくださりました!
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![Mei&Me(原題:僕と笠原メイ)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/1920341/profile_a12e6d43b89eff9a737282d8719efac5.jpg?width=600&crop=1:1,smart)