見出し画像

【連詩】コープスリバイバー

(裏) 裏路地ドクソ       (笠)笠原メイ

(裏)船が天の川を下る時間帯
闇は我が物顔で皇帝を気取り、月を娶ろうと思案している
眠れば刹那の目合いの後に
骨が軋む音がする

(笠)悪魔の猫がリムジンで迎えにきた
「行き先は?」「さあね…」
紅い瞼の少女とキスをした、闇が眩しく
くらげのように骨や肉の感触がなかった

(裏)触覚の消失を猫が嗤う
行先も分からぬまま乗り込んだ黒塗りの車輪が
走る毎に悲鳴をあげる、命の終着を決めるには
あまりにも悪魔に相応しい夜である

(笠)月明かりに照らされた十字路
ピンクシガレットを咥えた欺瞞的な傷
触覚だけでなく声帯も奪われて
残ったのは蠍の刺青と片足のブルース

(裏)毒を孕んだ玲瓏なフレーズが
アイシャドーの色彩を冬色へと誘う
眠ることの無いクラゲの歌は
少女の視線を遮ってゆく

(笠)十二月の有刺鉄線のような喉笛を
切り裂いた涙はガソリンの味で
刹那の星空を経由するだけで
簡単に致死量に達してしまう

(裏)星々の鳴り響く夜明け前
産まれて初めて咆哮を上げた
月が口吻を洩らすよりも早く
また、少女に唇を奪われた

(笠)気付けば舞台でギターを弾いていた
猫の悪魔も紅い瞼の少女も
アイシャドーの冬色に溶けて
伝説はこうして生まれたって訳なのさ



*今回は裏路地ドクソさんとの連詩です。題名はカクテルの名前で『死者を甦らせるもの』『死んでもあなたと』という意味を持っています。ダーク&メルヘンな世界が生まれました◎

いいなと思ったら応援しよう!

Mei&Me(原題:僕と笠原メイ)
いつも記事を読んで頂いてありがとうございます。フォローや、ハートマークで満足ですが、ご支援して頂いたら、詩集の制作費の足しにさせてもらいます!