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東洋医学講座 312

脾系統の病理と実邪

脾実の場合

①脾実のときの症状として腹痛を挙げます。これは実でも虚でも現れる症状でありますが、腹痛を実なる症状として挙げた場合、実証タイプの人は痛みは強くなります。

なぜ痛みが強いかといいますと、実証タイプの人は体力があり、抵抗力も強いのでとても痛がります。しかし、実際には治りやすく、その反面、無理をしやすく、不摂生もしやすくなります。痛がる場合は、まだ体力が十分にある証拠であります。

虚証タイプの人は、防衛力が一歩退いて中に入るので、あまり痛みは強く感じなくなっています。病と体力との戦いが中に入っているので、表面上の痛みは強くありません。冷えが入った場合でも、感覚が鈍っているのでわかりにくくなっています。

実証タイプに人が風邪をひくと、悪寒や発熱も強くなります。戦いが表面にあるからです。反対に虚証タイプの人は、抵抗力が弱いのでぐずぐず長びきやすくなります。

②腹が張るのも虚証でもありますが、痛む場合と同様に実のほうが強く張るということになります。

③同じ未消化でも、実の場合は脾力が強いために腎脾のバランスがとれない消化不良になります。体力もあるので、発熱作用も旺盛で、便秘しやすい傾向になります。虚証の場合は、脾力不足で中が冷えているので、消化力も低下し保ちきれず、下痢症状になりやすくなります。もちろん、実証タイプの人でも急性の細菌性下痢やおう吐はあります。

④身が重くなるのは、脾経が四肢や肌肉全体を司っているためにこのような症状は出ます。実証タイプの人は、ぐったりするといった症状になります。そして、関節にまで症状が来る場合は、さらに腎虚が加わっているとみていいでしょう。

⑤よく飢えを感じるのは、実証タイプの人が脾旺が亢進状態にあるので、食欲も旺盛でいくら食べても空腹感があります。

⑥足が萎えて歩行しにくいのは、脾は四肢に関与しているので、脾の弱りは手足が萎えます。ところで、四肢は横隔膜を中心として、上肢と下肢に分けられます。上肢は肺と心が根となり、下肢は腎と肝が根となっています。そして、脾はその中心に合って全体を把握しています。

脾が病的であるとは、脾の亢進があり、過実しています。そこで、脾剋腎になり、腎に影響が来るので、その枝である下肢に症状が出ます。したがって、足がだるいという症状をみて、脾から腎肝へくることが分かります。もし、先天的に肺が弱い人の場合では、脾から肺の方へ影響し、肺に症状が出てきます。

⑦足の筋肉が引きつって下腿に痛みを感じるのは、筋肉は肝に関係しているので、脾から肝へと病が波及していることが分かります。

このように一つ一つの症状は、非常に大切なものでおろそかにできません。症状というものは、体力・体質に生活環境がプラスされたものであり、症状をみるとその人の生活環境が分かります。

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