東洋医学講座 199
〇心と汗
▽五液について
身体の外へ発散する体液を五液に分けますと、涙、汗、涎(よだれ)、涕(なみだ)、唾(つば)です。この五液の中で〝なみだ〟と読むのが涙と涕ですが、涕(てい)のほうは、悲しくて泣きじゃくるときに使う字です。なみだに二種類あるように口に関するほうにも涎と唾の二つがあります。
この五液は、だいたい顔面に働くものを五種に分類しています。『素問』ではこのような分け方をしています。
▼涙は木気の作用
肝が根になっている一つの働きとして涙があります。涕との相違を説明しますと、感激の涙、眼球の表面を滑らかにする涙液などを涙といい、悲しみのために鼻水と共に流れ出るなみだを、肺の作用の一つの涕といっています。
涕は収斂の働きの金気で、遠心性の発散作用ではありません。発散は遠心的に働く陽遁、収斂は求心的に働く陰遁です。つまり、涕には内側に引き締まる働きがあります。精神的にいいますと消極的、さらにそれを収斂させると悲しみになります。涕は肺の作用で、悲しみの涕です。それが木気の働きから出ていて、発動の働きです。
人の一生を木火土金水に分けますと、木は春に当たります。これは成長期の若い人であり、青春期、木旺気となります。成人を20歳とすると、幼児は生まれたての腎精体で、腎旺期となります。腎が中心となって働いているということです。青春の頃は肝が中心に働いていて、肝旺気となります。発生・発動など、動的なものは全部肝の働きです。したがって、若い人はよくしゃべり、よく歌います。喜怒哀楽が激しく、気分の移り変わりも激しくなります。これらはすべて木気の作用からきています。新陳代謝が盛んで、体液全般が多くなります。
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