東洋医学講座 287
〇五味の生成
▽五味との働きと人体
▼甘味を摂り過ぎると...
甘味は口から食道を通り胃に入ります。胃に入ると、甘味は感じられず、適量であればブドウ糖に変化してエネルギー源としますが、過剰のときは胃の収縮筋を弛緩させます。胃痙攣のときは、胃の筋が引きつっている異常亢進の場合なので、砂糖湯を飲むと症状が消失します。これは甘味を入れると、神経の興奮を緩め、筋肉の引きつりがとれるからです。このような作用から、糖質が胃の中に入ると内臓筋が緩むことが分かります。
甘味を過剰に摂取すると、内臓筋は弛緩して蠕動運動は低下し、過剰な甘味は体中に回って、次々と五臓の機能を低下させてしまいます。一番傷つけられるのは土剋水の腎であり、次に逆剋で肝、そして自剋で脾・胃の順です。脾・胃が強ければ自剋は最後になります。すなわち五機能が低下することは、どんな病気にでもかかるということであります。
糖尿病は、脾・胃系の極度に低下した病であり、脾系の中での水が弱いときにかかります。甘味は五味の母胎なので、これによって全体が痛められやすくなりますが、他の四味、例えば辛味の場合は、肺が強ければ辛みが入っても大丈夫であります。辛みを過剰に摂取すると一番おかされるのは肝であり、もし肝が丈夫であれば、脾にいくことになります。したがって、辛味によって五臓全部が破られるまでには相当な時間がかかるわけであります。甘味以外の四味の場合は、単臓のみの障害から始まり、相剋関係で痛めるようになりますが、甘味の過剰摂取は、他の四味のそれより影響が大きいのであります。
また、季節によっても五味の摂取量は異なってきます。暑いときや暑い地方では、苦味や酸味を多くとり、辛味や塩味を少なめにとります。また、寒いときや寒い地方では、辛味や塩味比較的多くとり、苦味や酸味を少なくとるといった要領になります。