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東洋医学講座 318
脾と肺
運気と時代病
昔は肺疾には栄養を与えて脾力をつければいいといわれていましたが、これは要するに第二次世界大戦までのような結核全盛の肺機能低下時代にはとくに大切だったわけでした。今日では抗生物質ができて結核は少なくなったといわれています。
菌はいつの時代にもあるので、それに負けるかどうかはその菌に対する人間の抵抗力にかかっています。そして、時代病として現れるようなときに人間の抵抗力には、天の気の働きが大きく影響しているのであります。ちょうど肺系に相剋現象を起こす運気がめぐっているときは、肺の力が全体に落ちます。宇宙の働きなので、全ての人間に作用します。このようなときにどんどん侵されるわけであり、このときに既存の抗生物質が効果があるかは分かりません。
このような肺気の退運時代には、時代劇に出てくる高麗人参のような栄養剤を与えて脾力をつけさせ、体力によって菌が自然に死んでしまうようにすることが大事だったわけであります。そして、運気の移行とともに、人体はその菌に対する免疫力がつき、さらにそれが子から孫へと遺伝的に累積されるので、「陽極まれば陰になる」の法則通りにやがて下火になります。
今日では、結核よりも腎・肝機能低下症状が中心になりつつあります。腎・肝を剋する気が回っているのだと考えます。また、結核の前は、黒死病といわれたペストが流行していました。これは、細菌や異物を食する細胞から成る全身のリンパ節や膵臓を侵すわけであります。また、腸チフスが流行していたことから、脾を剋する運気が回っていたかもしれません。それはともかく、現代は腎機能が低下しているので、こういうときは脾力をつけるのは、かえって腎を傷つけよくありません。
なお、結核の場合でも、腎弱タイプの人にはあまり脾力をつける過ぎると逆効果になるので、脾力をつけるにも体質・量・時間などといったものを考慮する必要があります。