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東洋医学講座 48

〇土の働きと五行の成立①


万物はすべて時間と場の中におかれています。したがって、それは時間と場をもった存在であるといえます。言い換えれば、万物は必ずどこかの場に属し、そのうえで盛衰変化をしているのであります。場が変わると働きや性格を変えてしまいます。

例えば、肝臓は人体の中にあるときと外に取り出してしまったときでは、全く働きを異にします。同じ一人の人間でも、職場にいるとき、家庭にいるとき、酒場にいるとき、電車に乗っているとき、外国に行ったときなど、全て場が変わることによって、位置や役割を変えます。

このように万物は場の中にあって、場の影響を受けて、それによって働きや性格を規定されています。このことはとりもなおさず「万物は場によってつくられている」ということであります。

人間は地球という場を抜きにして生まれてこなかったし、生存もできません。肝臓は人体という場なしにつくられないし、働けません。赤血球は血液という場なしにはつくられないし、働けません。魚は海という場なしには生まれないし、生きられません。ペンギンは南極のような寒い所でなければ生存できません。古代文明は水と肥沃な土地がないと生まれなかったです。

また、五行論は四季変化の豊かな所でなければ生まれなかったでしょう。巨大ピラミッドも労働力を多数使用できる社会のしくみがなければ生まれなかった、また、コンピュータなどの最新機器は発展した資本主義社会なしには生まれなかったでしょう。時代も一つの場であります。法律や道徳などは時代によって大きく変わっています。その他、よく話の中で「それはちょっと次元が違う問題だよ」などというときの〝次元〟も一つの場であります。また、「吉方位をとる」というときの〝方位〟も場の働きをりようしたものであります。

このように、万物は場を母胎として生まれ、場の上で生々営々しているのであります。もっと正確にいえば、場によって生々営々されているのであります。この〝場〟の働きを五行論では「土気」と符号づけています。

木火金水の四気と一緒に考えると、土とは木火金水の四気が具体的に働く場のことであります。木火金水の成立を説明した巴図でいえば、円そのものが土なのであります。そして、土の働きの中心は木火金水の四気を形をとるための素材を提供し、それによって木火土金水の五系統から成る統一体を形成することになります。

土の働きは陰陽論の中では陰の働きの中に、三才論では地気の働きの中に含まれていますが、この五行論ではじめて独立して取り上げられるようになります。

陰陽の成立から知られるように、だれもが所属している最も大きい場(土)は、宇宙そのものであります。また、三才の成立からわかるように、地上の万物全てが所属し、影響をうけている場は、地球そのものであります。

この地球大地の働きは、場としての働きをもっともよく象徴しているところから、「土」という符号をとっています。

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