東洋医学講座 53
〇五行の働き①
◇木気の働き
一般に春というと、どういうことをさしてそういっているかといいますと、だんだん暖かくなって、草木の芽が出て、葉は開き、ぐんぐん伸長していく姿を見て、春を判断します。
この春に代表される伸長作用、加熱膨張作用、始動作用、または半開作用を、古人は「木気」と符号つけました。他に適切な符号があればそれでもいいのですが、春に「木」という符号がぴったりだと考えられました。
したがって、伸長・半開・始動作用をもっているものは、全て木系の所属し、春はその一つであるということであります。
また、木気は、陽が主になってできているもの、例えば、蛋白質澱粉体である生物は成長させるが、反対に氷や金属のような陰体は溶かしてしまい、衰退させます。じっとしていること、凝固していること、寒冷な環境であるなどを本性とするもの、すなわち陰が中心になってできているものにとっては、同じ伸長・加熱・半開・始動作用が、マイナスに作用します。
木気は、陽遁の生成・発展であるとともに、陰遁の衰退であります。この両側面が一緒に働いています。ですから、春になったら、万物全てが成長するのではなく、他方で機能が衰えたり、消滅したりするものもあります。
◇火気の働き
火気の働きを代表するのが、夏の働きです。夏は一年で一番暑く、そして、この暑いを代表するものが火なので、夏に「火」という符号をつけました。
その働きといえば、草木の形を通して知るのが分かりやすいです。夏には草木は最も高く伸びて、枝葉をいちばん広げます。つまり、もっている力をフルに発揮しているわけです。
この最大膨張、全開作用が火気の働きです。この働きを受けて成熟するものがあれば、消滅させられるものもあります。この陽遁の成熟、陰遁の消滅の両方の作用をあわせもっているのが、火気であります。