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サービス連携。連携失敗でキャラが笑う

他社サービスとの連携でいろいろと便利になる、あるアプリ。アカウント登録時に、別の場所で発行されたパスワードが必要なのですが、パスワードを入力せずに先に進めてしまいます。これは、多くのユーザーがパスワードを把握できていないことを示唆しており、その救済措置だと思いますが、個人情報を取り扱うアプリとして、本人確認が十分でないことが心配です。

サービス連携を試みると「アプリが起動できない」というエラーメッセージが表示され、マスコットキャラクターが笑っています。

笑ってはいけない場面だと思います。


役割

アプリの他社サービスとの連携機能は、ユーザーにとって利便性を高める重要な役割を果たします。異なるサービス間でのデータのシームレスなやり取りを可能にすることで、ユーザーは複数のアカウントやパスワードを覚える手間を省き、よりスムーズなユーザー体験を享受できるからです。また、連携機能は、サービスの価値を高め、ユーザーのエンゲージメントを向上させるための強力なツールにもなります。

課題

しかし、あるアプリでは、アカウント登録時に別の場所で発行されたパスワードが必要であるにもかかわらず、パスワードを入力せずに先に進めてしまう設計になっています。これは、多くのユーザーがパスワードを把握できていないことを前提とした救済措置かもしれませんが、個人情報を取り扱うアプリとして、本人確認が不十分であることは重大な課題です。

これらの課題は、ユーザビリティの基本原則である下記に反しています。

  • エラー防止(Error Prevention)

  • エラー認識・診断・回復支援(Help Users Recognize, Diagnose, and Recover from Errors)

リスク

このようなデザイン上の問題は、いくつかのリスクがあります。

  1. セキュリティリスク
    パスワード入力を省略できる設計は、ユーザーにとって利便性が高い反面、本人確認が不十分であるため、セキュリティが脆弱になり、個人情報の漏洩リスクが高まります。認知バイアスの一つである「楽観バイアス(Optimism Bias)」により、ユーザーは自分のアカウントが不正アクセスの対象になる可能性を過小評価しがちです。

  2. ユーザーの不信感
    エラーメッセージに対する不適切な対応(マスコットキャラクターの笑顔)により、ユーザーは不安や苛立ちを引き起こす可能性があります。不信感が募ると、アプリの信頼性は低下していきます。

  3. ユーザー体験の低下
    認知バイアスの一つである「アンカリング効果(Anchoring Effect)」は、ユーザーが初めてのエラーメッセージやトラブルに対して抱いた印象が強く残り、その後のアプリ全体の評価に影響を与える可能性があることを示しています。アプリが正常に起動しない状況での不適切なフィードバックは、ユーザー体験を著しく損ないます。

解決案

現在の課題を解決し、ユーザー体験を向上させるためには、以下のような対策が有効です。

  1. 段階的認証
    パスワードなしで進行可能だが、重要機能にはパスワードを要求する。

  2. パスワード入力の必須化
    アカウント登録時にパスワード入力を必須にすることで、セキュリティを強化する。

  3. パスワードリマインダー
    ユーザーがパスワードを忘れてしまった場合、リセット機能やヒントを提供して回復の手助けをする。

  4. 多要素認証の導入
    パスワードに加え、二段階認証や生体認証を導入することで、本人確認をより厳密に行い、不正アクセスのリスクを低減させる。

  5. 適切なエラーメッセージの表示
    エラーメッセージには、問題の原因と解決策を明確に記述し、マスコットキャラクターの表情も状況に応じて変更しましょう。ユーザーに対して敬意あるフィードバックを提供するという意味です。

これらの解決策は、「エラー管理」の概念に基づいています。これは、エラーを完全に防ぐのではなく、エラーの影響を最小限に抑え、ユーザーが簡単に回復できるようにするという人間工学の原則です。

参考: The Psychology of Everyday Things. Basic Books. Norman, D. A. (1988).

まとめ

アプリのサービス連携とアカウント登録プロセスを改善することで、セキュリティと使いやすさのバランスを取ることができます。例えば、銀行のATMが取引の重要度に応じて認証レベルを変えるように、アプリも機能の重要度に応じて認証方法を変えることができます。エラーメッセージは、問題を明確に説明し、次のステップを示すガイドのような役割を果たすべきです。マスコットキャラクターの表情も、ユーザーの気持ちに寄り添うものであるべきでしょう。

これらの改善により、ユーザーは安心してアプリを使用でき、問題が発生しても適切にガイドされると感じることができます。小さな配慮の積み重ねが、ユーザーとアプリの良好な関係を築き、長期的な利用につながるのです。


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