見出し画像

アプリの顔認証。迷惑かもしれないタイミング

スマホに顔を合わせるだけでログインできるなんて、便利な時代になりましたよね。でも、アプリ起動直後に始まるタイプの顔認証は、いつ反応するか予測できず、結局スマホから目を離せません。これでは「スマホ歩き」から「スマホ立ち止まり」になってしまいます。

顔認証は便利。しかし、ユーザーが認証のタイミングを自分で選べるほうが場合によっては適切です。ボタンをタップする手間は増えますが、突然立ち止まって後ろの人に迷惑をかけるよりマシですよね。アプリの利用シーンを想像して、最適な方法を選びましょう。


役割

生体認証技術は、スマートフォンのセキュリティとユーザー体験を向上させるために開発されました。この技術により、ユーザーはパスワードやPINコードを入力することなく、簡単にデバイスにアクセスできます。

とりわけ顔認証は、手がふさがっている場合や、迅速なアクセスが求められるシチュエーションで、その利便性が際立ちます。例えば、料理中や買い物中など、瞬時にデバイスをアンロックできるため、日常生活の様々な場面で大いに役立つ技術です。

課題

しかし、アプリ起動直後に始まるタイプの顔認証には問題があります。ユーザーが顔認証のタイミングを予測できないため、スマホから目を離せない状態が続くからです。

これにより、「スマホ歩き」が「スマホ立ち止まり」になり、特に公共の場所では周囲の人々に迷惑をかける可能性があります。突然立ち止まることによって、人々がぶつかるリスクも増加します。これは、ユーザー体験を悪化させる大きな要因となるでしょう。

これらの課題は、ユーザビリティの基本原則である下記に反しています。

  • ユーザーのコントロールと自由度(User Control and Freedom)

  • 柔軟性と効率性(Flexibility and Efficiency of Use)

リスク

ユーザビリティの観点から、顔認証のタイミングが選べない場合、下記のリスクが生じます。

  1. ユーザーのフラストレーション増加
    顔認証が意図しないタイミングで作動すると、ユーザーは煩わしさを感じます。特に、急いでいる場合や公共の場での使用時に、後ろの人に迷惑をかけることがあります。

  2. 安全性の低下
    ユーザーが歩きながら顔認証でロックを解除しようとする場面では、転倒や衝突のリスクが高まります。

  3. セキュリティの低下
    ユーザーが顔認証の不便さからこの機能をオフにした場合、セキュリティが低下するリスクが考えられます。

  4. 社会的な批判
    認証失敗が起因となり、公共の場所での立ち止まってしまうような迷惑行為は、社会的な批判を招く可能性もあります。

  5. ユーザーの離脱
    使い勝手の悪い認証プロセスにより、ユーザーはアプリの利用に不便さを感じ、結果的にそのアプリを使わなくなる可能性があります。ユーザーの満足度が低下するだけでなく、ブランドイメージにも悪影響を及ぼすでしょう。

これらは、認知バイアスの一つである「注意バイアス(Attentional Bias)」に関連しています。ユーザーは顔認証のタイミングに過度に注意を払う必要があり、周囲の状況への注意が一時的に失われ、他の重要な情報を見逃す可能性があります。

解決案

顔認証の利便性を維持しつつ、ユーザー体験を向上させるためには、以下のような対策が有効です。

  1. ユーザー起動型認証
    ユーザーが顔認証のタイミングを選べるようにする。具体的には、顔認証を開始するためのボタンを設置し、ユーザーが自分のタイミングで認証を行えるようにする。このアプローチは、ユーザーにコントロール感を与え、ストレスを軽減します。

  2. 事前通知の提供
    顔認証が始まる前に、視覚的または音声による通知を提供し、ユーザーに認証の準備を促す。この方法により、ユーザーは適切なタイミングで顔認証を行うことができます。

  3. コンテキスト認識
    GPS や加速度センサーを利用し、ユーザーの状況に応じて認証方法を自動選択する。

  4. ユーザー設定
    アプリごとに認証方法やタイミングをカスタマイズできる機能を提供する。

  5. アダプティブ UI
    ユーザーの使用パターンを学習し、最適な認証方法を提案する。

これらの対策を導入することで、ユーザーは顔認証の利便性を最大限に享受しつつ、予測可能でストレスの少ない認証体験を得ることができます。

なお、これらの解決策は、「状況認知」の概念に基づいています。これは人間工学の重要な要素で、ユーザーの現在の状況や環境に応じてシステムの振る舞いを適応させることを意味します。

参考: Toward a Theory of Situation Awareness in Dynamic Systems. Human Factors, 37(1), 32-64. Endsley, M. R. (1995).

まとめ

顔認証技術は確かに便利ですが、ユーザー体験を最適化するには、技術の適用方法を慎重に検討する必要があります。ユーザーに認証のタイミングと方法の選択肢を与えることで、利便性とユーザビリティのバランスを取ることができます。それは、エスカレーターを使うか、階段を使うかを選択できるようにするのと同じです。

最終的には、アプリの利用シーンを十分に想像し、ユーザーのニーズに合わせた柔軟な設計を心がけることが重要です。このアプローチにより、技術の恩恵を最大限に活かしつつ、ユーザーの安全と快適さを確保することができるでしょう。


お問い合わせはこちらから(ヒアリングからお見積りまで無料です)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?