見出し画像

思い切って明かしちゃいます。Highlightのロゴができるまでのプロセス

毎日、私たちがどこかで目にするさまざまなロゴ。その制作プロセスってあまり知られてないですよね。Highlightは自社サービスじゃないか。うっとおしいほど語っても、誰にも怒られないじゃないかと。

そんなことで今回は、普段あまり明かされないロゴができるまでのプロセスについてお話ししたいと思います。


秒速でアイデアを形にする男

私がリスペクトを込めて「師匠」と呼ぶクリエイティブディレクター宇都宮潔。アウトプットのスピードが異常に速いです。どれくらい速いかというと、最初のヒアリングから1時間後に3案、夕方には8案ということがまれにではなく、しばしばあるくらい

あとでボツ案を見せてもらうと、なんと5倍くらいのアイデアが残っていたりします。そんな彼がヒアリングする姿は、まるで野外活動で目を輝かせながらノートにびっしりとメモを取る少年そのもの。そこでのインプットが、圧倒的なアウトプットを生み出しているに違いないな、といつも思います。

クリエイティブディレクター 宇都宮潔(写真右)

ロゴができるまでのプロセス

そんな彼が作ったHighlightロゴの話の前に、まずはロゴ制作のプロセスについてお話ししたいと思います。これはアーキビジョンのプロセスなので、他のデザイン会社とは少し違うかもしれないことをご了承ください。ロゴができるまでの流れは大まかにこんな感じです。

  1. ヒアリング

  2. ネーミング考案

  3. アイコンロゴ制作

  4. 文字ロゴ制作

  5. 配色制作

  6. 完成見本制作

  7. 最終仕上げ

  8. ガイドライン策定

  9. 納品

それぞれのプロセスについて、簡単に説明します。

1.ヒアリング

お互いの相性を確かめるため、私たちが最も気を配るプロセスの一つです。会社紹介はさらりと済ませて本題にフォーカス。私たちのパーソナリティが分かるような話し方や事例の見せ方をします。いくら実績やスキルがあっても、クライアントが「この人たちと一緒にやりたい」と思わなければ、どこかで歯車が狂います。私たちは、クライアントに「一緒に生み出した」という共感と、「この人たちと一緒にできて楽しかった」という体験を得てもらいたいのです。だから、ヒアリングやちょっとした会議も、私たちにとってはUXデザインの一つです。

2.ネーミング考案

つかみとなる重要なステップです。宇都宮は「直球、変化球、ボール球」といった具合に、意図的にバリエーションを変えたアイデアを出します。ネーミングは人によって好みが分かれるので、同じ路線のアイデアばかり出しても、進むべき方向のヒントは得られません。クライアントが社内でじっくり考えたアイデアを持ってくることもあれば、自社の他サービスと少しかぶる、という大人の事情で候補から落ちる案が出てくるので、比較的早い段階で3分の1くらいに絞られます

3.アイコンロゴ制作

いよいよ形が見えてくるステップです。このプロセスではさまざまな反応が見られます。自分たちが生み出そうとしているモノやコトが初めてビジュアル化されるので、驚きや戸惑いも含めて「おお!」となることが多いです。SNSのプロフィールなどにも使われるため、大きくても小さくても視認性が確保されるのがマストです。

ちなみにアイコンロゴから取り掛かるのは、下記の理由だそうです。

・まずは形にフォーカスして自由にデザインしたい。
・期待されるコンセプトを形にしたときの見え方を探りたい。
・本当に文字よりも伝わる形になっているかを先に確認しておきたい。

クリエイティブディレクター 宇都宮潔

4.文字ロゴ制作

アイコンロゴに合わせてベースとなる書体を選びます。サービス名が欧文の場合、選択肢が無限にあるので、業種や企業イメージに合ったものを選ぶよう心がけますが、アイコンロゴとの親和性を最優先します。時に意外な組み合わせが好感触を得ることも。宇都宮は、フォントをアウトライン化してアクセントを加えることもよくやります。

5.配色制作

特に要望がない場合、コーポレートカラーは意識しません。クライアント側にガイドラインがある場合は、それを踏まえたうえで配色を決めます。新しさを期待されることが多いため、業種やサービス内容に合わないかもしれないトレンドカラーを使って、振れ幅の許容度合いを確かめることも。注意が必要なのは、クライアントの新規事業の場合です。企業ロゴと並べてPRされる機会が多いため、並べたときに主張し過ぎず、似た雰囲気にならないよう配慮します。

6.完成見本制作

ここまでに仕上がったものを、Webサイトや名刺に当てはめた完成見本をいくつか作ります。こうすると、ロゴ単体で見たときとはガラッと印象が変わることがあり、自分たちの最終確認にもなります。クライアント側も実際の活用シーンがより明確にイメージできるため、この完成見本が最終仕上げの道しるべになります。ここまでくると、ほぼ1案に絞り込まれた状態になります

7.最終仕上げ

最後の1案を、胸を張って世に出せるクオリティまで引き上げます。ここはスムーズに終わりそうで、実はかなり細かい作業の連続になることが多いです。クライアントも「このロゴが世に出るんだ」と良い意味で緊張感を持ち始めるので、その気持ちに丁寧に寄り添いながら仕上げていく時間ですね。何もフィードバックがないときは、クライアントが遠慮してる可能性があるので、こちらから「ほかに気になる点はありませんか」という具合に、やり残しが本当にないか確かめたりもします。

8.ガイドライン策定

毎回作成するわけではなく、要望があれば作成します。というのも、著作権を譲渡する場合、クライアント側のブランディングチームが自社の方針で作成することが多いからです。その場合は、口頭ですり合わる程度で済んでしまいますね。

9.納品

作った成果物をすべて渡します。Illustratorファイル、SVG、PNGなど、もれなくすべてです。なぜなら、Webやポスターやフライヤーなど、用途に適した画像形式をクライアントに使ってもらえないと、せっかく時間をかけて作ったロゴのクオリティが落ちて見えてしまうからです。ロゴを見る人が誰であれ、結果として「作ったデザイン会社の仕事雑だね」という印象を持たれたら損しかないですよね。だから、全部渡してしまいます。

ここに書かなかったのが、競合リサーチと商標調査です。クライアントのマーケチームと法務部門がやってくれることが多いため、依頼されたらやる感じです。これらはその名の通りの作業なので、割愛しました。またタグラインは少し文脈が変わるため今回は触れてません。

Highlightのロゴ

前置きが長くなりました。いよいよHighlightのロゴについてお話しします。

今回は宇都宮が多忙だったこともあり、彼にはこの企画のことを立ち話で伝えた程度。本来じっくり時間をかけるいくつかのプロセスを省き、完全に宇都宮のインスピレーションに頼って作ってもらいました。

ネーミング

多忙という話はどこへやら、いきなり26案も出てきました。宇都宮を取り巻く時間軸が歪んでいるのでは、と疑うほどのアウトプット量ですが、まあ、いつも通りの出だしです。どれも良い。決められない

ネーミング案

アイコンロゴと文字ロゴ(第1弾)

「決められないじゃないか」と迷っている間に、いつものスピーディースタイルで3案を押し込んできました。アイコンロゴと文字ロゴを一緒に作ってきましたね。いつも通り、いきなり完成品クオリティ

宇都宮は最近、FabLab Shinagawaさん主催の「3Dプリント自助具デザインコンテスト2023」で最優秀賞を受賞するなど、プロダクトデザインもできる男なので、はっとする立体的なグラデーション技をときどき織り交ぜてきます。

ちなみに、この段階での個人的な好みはSweepでした。「課題を掻き出す、問題の本質が見えるように」。今回のコンセプトにぴったりではないかと。うん、どれもいい

A案(スピーディーなクリエイション)
B案(スピーディーなクリエイション)
C案(スピーディーなクリエイション)

アイコンロゴと文字ロゴ(第2弾)

宇都宮から「クライアントワークじゃないので、いつもとは違うスローなクリエイションスタイルで作ってみたい」と申し出がありました。

もともと宇都宮は穏やかな人柄で、じっくり物事を考えるタイプなので、スピーディーなスタイルはビジネスモードのクリエイションスタイルなんですね。彼の本質が出るかもしれないペースで作ったものを、むしろ見てみたい。その申し出を快諾して、しばし待って(それでも速かった)上がってきたのが2案

A案(スローなクリエイション)
活用イメージ
B案(スローなクリエイション)
活用イメージ

ネーミング案にはなかったものが来ました。おそらく彼の中で頭が一度リセットされ、雷光閃くコンセプトが落ちてきた瞬間だったんでしょう。

思い起こすと、最初にこの企画の話をしたときに宇都宮が「赤ペン先生みたいな感じかな」とつぶやいていたことを思い出しました。蛍光ペンで課題をマークする。これは誰もが知っているし、やってきたことだと。スタッフ全員、納得感しかなく全会一致でネーミングはHighlightに決定。

最終仕上げで宇宙へ旅立つ

B案に決定したので少し調整するくらいで上がってくるかと思いきや、ここから宇都宮の妄想力が宇宙へ旅立ちました。

大航海時代。多くの船乗りにとって、暗闇の中で輝き、北を指し示し続ける北極星は希望の星だったのではないでしょうか。改善の道筋を描くHighlight。改善の確信を持つことができるHighlight。Highlightがクライアントにとっての希望の星になる。そんな思いを込めて制作しました。

クリエイティブディレクター 宇都宮潔

大航海時代、北極星…。あまりに壮大なストーリーに最初は戸惑いましたが、見れば見るほど、彼の真摯さ、観察眼、想像力が深く反映されたネーミングとロゴじゃないかと。彼が挑戦したスローなクリエイションの金字塔ともいえる成果。オフィスに貼りだし、スタッフ全員で毎日眺め「絶対にこれ以外ありえない」となり、このロゴに決まったという経緯です。

書体の考察
配色の考察
モチーフのバリエーション
完成品
ダーク背景
ライト背景
私の黄色Tシャツが配色のインスピレーション!?

ロゴ制作も体験デザインの一つ

デザインが本職ではない方が、世の中で見るロゴは完成品です。今回、そのロゴができあがるまでの裏話を書いたのは、完成に至るまでのプロセスがクライアントにとっても、私たちにとっても協創体験の一つだからです

すべてのクリエイションが、私たちにとっては体験の連鎖。私たちが見ているのは、クライアントだけではなく、一緒に作り上げたモノやコトの先にいる人々の姿です。その人々が笑顔で人生を謳歌する姿をイメージしながら毎日仕事をしています。

ほんの一部を書くつもりだったのに、本当にうっとおしいほど長くなってしました。次回はイラストレーターが登場します!


お問い合わせはこちらから(ヒアリングからお見積りまで無料です)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?