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スマホ通知。全部読まないとマークが消えない

日々の生活を快適にするスマホの通知。煩わしい通知マークに悩まされたことはありませんか? よくあるのは、お知らせをすべて読まないと通知マークが消えないアプリです。関心のない情報でも、通知マークが消えないので読むしかない。これが続くと、ユーザーはそのアプリの通知をOFFにし、いずれアプリを削除するかもしれません。

通知は、例えるなら電話中の人に割り込んで話しかけるようなもの。その必要があるかどうかは内容次第です。例えば、通知をまとめて既読にできるボタンを置くなどの工夫が有効です。行き過ぎた干渉は、どの世界でもユーザーに見放される原因になります。ぜひご注意ください。


役割

スマートフォンの通知機能は、ユーザーに重要な情報をタイムリーに提供し、アプリとのエンゲージメントを維持する役割を果たしています。これは、ユーザー体験の観点から、「情報の適時性」と「ユーザーの注意喚起」という重要な機能を提供しています。

しかし、過剰な通知は逆効果となり、ユーザーのストレスや不満を引き起こす原因となります。

課題

通知マークがすべての通知を読まないと消えないアプリは、ユーザーにとって煩わしいものとなります。特に、関心のない情報でも通知マークが消えないため、ユーザーは不要な通知まで確認せざるを得ません。これが続くと、ユーザーは通知をOFFにし、最終的にはアプリ自体を削除する可能性があります。

この問題は、サービス提供者やアプリ開発者がユーザーのアテンションエコノミーについて十分に理解していないことから生じるものであり、ユーザー体験に大きな悪影響を及ぼしています。

なお、これらの課題は、ユーザビリティの基本原則の下記に反しています。

  • ユーザーのコントロールと自由度(User Control and Freedom)

  • 柔軟性と効率性(Flexibility and Efficiency of Use)

リスク

ユーザビリティの観点から、このような通知の設計にはいくつかのリスクがあります。

  1. ユーザーのフラストレーション増加
    通知が過剰または不適切に設計されていると、ユーザーはアプリに対してネガティブな感情を抱きやすくなります。これは、認知バイアスの一つである「情報過多バイアス(Information Overload Bias)」に起因します。

  2. 通知の無意味化
    ユーザーは、受け取る情報が多すぎると重要な情報を見逃す可能性が高まり、結果的に通知の全体を無視する傾向があります。

  3. アプリの信頼性低下
    ユーザーが通知をOFFにすると、重要な情報も見逃すリスクが高まり、アプリの信頼性が低下します。

  4. ユーザーの離脱
    通知が過剰で煩わしいと感じたユーザーは、通知疲れを感じ、最終的にアプリを削除する可能性があります。

このようなネガティブな経験は、ブランドイメージの低下や口コミによる悪影響をもたらす可能性もあるでしょう。言うまでもなく、ユーザー体験が著しく損なわれることになります。

これらのリスクは、「注意の経済学」という概念と関連しています。ユーザーの注意は限られたリソースであり、過剰な通知はこのリソースを浪費させる可能性があります。

参考: The Attention Economy: Understanding the New Currency of Business. Harvard Business Press. Davenport, T. H., & Beck, J. C. (2001).

解決案

通知に関する課題を解決し、ユーザー体験を向上させるためには、以下のような対策が有効です。

  1. 通知のパーソナライゼーション
    ユーザーの興味や行動に基づいて通知内容をカスタマイズすることで、関心のない通知を減らし、重要な通知のみを提供します。

  2. 一括既読機能の導入
    通知をまとめて既読にできるボタンを設置し、ユーザーが一度に複数の通知の状態を管理できるようにします。

  3. 通知の優先度設定
    ユーザーが通知の優先度を設定できるようにし、重要な通知とそうでない通知を区別します。これにより、ユーザーは自分にとって重要な情報を見逃さずに済みます。

  4. 通知頻度の調整
    アプリが通知の頻度をユーザーに調整させるオプションを提供することで、過剰な通知を防ぎます。

  5. 通知のグループ化
    同種の通知をまとめて表示し、情報の整理をより容易にする。

  6. スマート通知
    ユーザーの行動パターンを学習し、最適なタイミングで通知を送信する。

これらの解決策は、「インターラプション管理」の概念に基づいています。これは、ユーザーの作業の流れを尊重しながら、必要な情報を適切なタイミングで提供する人間工学的アプローチです。

参考: The scope and importance of human interruption in human-computer interaction design. Human-Computer Interaction, 17(1), 1-61. McFarlane, D. C., & Latorella, K. A. (2002).

なお、アクションが必要な通知は緊急であることが多いため、意図的に煩わわしく感じさせる工夫が必要であることも考慮してください。

参考: Indicators, Validations, and Notifications: Pick the Correct Communication Option by Nielsen Norman Group.

まとめ

スマートフォンの通知システムを改善することで、ユーザー体験を大幅に向上させることができます。通知は、投稿文が例えるように「電話中の人に割り込む」ようなものです。そのため、本当に必要な場合にのみ割り込むべきです。

例えば、メッセージアプリが未読メッセージの数だけを表示し、ユーザーが必要に応じて詳細を確認できるようにするのは良い例です。また、重要な通知とそうでない通知を視覚的に区別することで、ユーザーは優先順位をつけやすくなります。

通知システムの改善は、単にアプリの使いやすさを向上させるだけでなく、ユーザーの日常生活の質も向上させる可能性があります。適切な通知設計により、ユーザーはより集中して作業を行い、本当に重要な情報に適切に対応できるようになるでしょう。結果として、アプリとユーザーの長期的な関係構築につながり、アプリの価値を高めることができます。


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