自殺に追い込まれた新人小学校教員
採用間もなく自殺に至った小学校教員のニュースを取り上げます。実は、同様の悲劇は過去にも繰り返されていました。どうしてこんなことが起きているのでしょうか。
新任小学校教員が教室で自殺
2019年、春日市で市立小学校の新任男性教諭(当時24歳)が放課後に教室で首をつった状態で見つかり翌日に死亡しました。遺書があり自殺でした。男性は4月に採用されたばかりの新任教諭でした。
時間外勤務が2か月連続で100時間を超えていたり、先輩教諭からの高圧的ともとれる厳しい叱責・指導を繰り返し受けていたりしたそうです。これらが原因で精神疾患を発症し、自殺に至ったとみられています。
新人教員の自殺は過去にも
過去にも新任教員が採用間もなく自殺する事態は発生しています。
東京都西東京市立小学校の新任女性教員の例
2006年、新任女性教員(当時25歳)がうつ病になって自殺しました。採用されるとすぐに2年生の担任になりました。児童による万引きや、上履きが隠されるなどのトラブルが続き、保護者対応にも追われる中、うつ病を発症し、自殺に至りました。学校側の手助けが不十分で、休んではいけないと追い込まれていたとみられています。
東京都新宿区立小学校の新任女性教員の例
2006年4月に2年生の担任として着任したこの女性教諭は、2ヶ月後に自宅で自殺してしまいました。『無責任な私をお許し下さい。すべて私の無能さが原因です』と書かれた遺書が見つかっています。
学年が1クラスで相談できる同僚がいなかった、担任6人のうち4人が異動で替わったばかりで相談しづらい状況だった、などこちらも学校側の手助けが不十分でした。さらに、保護者から『結婚も子育ても未経験』などの指摘、校長から『親が「あの先生は信頼できない」と言っている』と伝えられる、などの状況からストレスが重なり、抑うつ状態になって自殺に至ったとみられています。
他にも埼玉県の小学校男性教諭(22)が校舎3階の図工室で自殺するということも2005年におきています。自殺報道はウェルテル効果(自殺報道が他の人の自殺の呼び水になること)が指摘されており、あまり大々的には報道されなくなりましたので、今回のニュースはかなり衝撃的でした。
小学校教員の労働環境はどうなっているのか
小学校の先生が周囲のサポートを受けられず自殺に至ってしまった背景を考えます。
離職者・休職者
精神的不調をきたして休職・離職する教員は増加傾向にあります。特に、小学校教員の精神疾患を理由とする離職割合は全校種でトップです。そして、休職者に占める小学校教員の割合は半数を占めています。また、多様な要求により、精神的に先生方は疲弊しています。さらに、劣悪な労働環境により小学校教員の欠員も深刻です。そのような状況では、周囲に相談したり助けを求めたりはし辛いことは用意に想像がつきます。
長時間労働の実態
日本教職員組合が実施した調査によると、時間外労働の平均は月当たりの換算で、中学校で116時間28分と最も多く、次いで小学校で91時間8分、という結果でした。平均で91時間ですから、若手の方が長時間労働の傾向が強いことを踏まえると、新任教員の100時間というのは意外な数値ではないでしょう。
こちらは、あくまで経験則や個人の体験でしかありませんが、小学校教員が月100時間の超過勤務をすることは珍しくはないとの声が聞かれました。
私の個人的な体験ですが、近所の小学校は毎日のように夜9時まで電気が付いています。長時間労働常態化しているせいで、相談しづらい雰囲気があったり、長時間労働に対する危機感が麻痺したりすることはあり得るでしょう。新人教員が月100時間の超過勤務をしていても、同僚や管理職は『皆同じだから大丈夫だろう』という感覚があったのではないでしょうか。
まとめ
教員の自殺という事態が起きていることを、教育関係者だけでなくすべての人に知ってほしいと思います。教室で自ら命を断つほど追い込まれている学校の先生がいます。そのような労働環境で教員が働くのが当たり前になってしまっていて、良いのでしょうか。
保護者の皆さんは、自分の子どもの担任がそのような状況で我が子を教えていたとしたらどう思いますか。安心して子どもが学べる環境が、今の小学校にあるでしょうか。