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動詞の分類と文法理解
英語学習では、動詞は様々に分類され学習されています。例えば、規則・不規則変化動詞や自動詞・他動詞、文型などです。ここでは、Vendler (1967)による動詞の意味分類を紹介し、この分類を使った文法理解へのヒントを示します。
動詞の分類はなぜ重要?
動詞は意味によって使われ方が異なることにお気づきでしょうか。有名なのは、進行形にしてはいけない動詞(状態動詞)です。実は、動詞の意味的分類は進行形や完了形の意味に大きな影響を与えます。しかし、状態動詞を除いて、この点は中高の英語教育ではあまり強調されていません。そのため、進行形や完了形の理解において誤解や誤用を招いているきらいがあります。
動詞の意味による分類
有名なVendler (1967) による意味的分類を紹介します。
state 状態動詞
have (もっている), know(知っている), believe(知っている), live(住んでいる), feel (感じる), hear (聞こえる), think (考えている), love (愛する), hate (嫌う)
特定の出来事というよりも、ずっと続く状態を表す動詞の仲間です。状態を表す性質のため、変化を表さないのが特徴です。
activity 活動動詞
run (走る), study (勉強する), walk (歩く), swim (泳ぐ), eat (食べる), drink (飲む), sleep (眠る), speak (話す), watch (見る), fly (飛ぶ), fall (落ちる)
活動動詞の表す出来事には時間の幅があります。例えば、走る動作は少なくとも一瞬では終わらず、一定の時間がかかります。しかし、活動動詞には出来事の終着点がありません。runなら体力が続く限り走りつづけることができるし、studyなら起きている限り勉強することを続けることができます。時間の幅がある一方、終着点が無いことが特徴です。
accomplishment 達成動詞
paint (塗る), make (作る), build (建てる), write (書く), destroy (破壊する), open (開ける), wash (洗う), sing (歌う), create (作る)
達成動詞は終着点に向かって進んでいく出来事を表す表現です。paintなら完成した絵、makeなら料理や作品などができるまでを表します。そのため、時間的な幅もあります。
achievement 到達動詞
die (死ぬ), win (勝つ), lose (負ける), find (見つける), arrive (到着する), stop (止まる), leave (出発する), realize (気づく), recognize (認める), happen (起こる)
到達動詞にも終着点があります。dieなら死んだ状態、winなら勝った状態という具合です。しかし、達成動詞とは異なり、到達動詞は時間の幅がなく一瞬で起こる出来事を表します。
hit (叩く), kick (蹴る), cut (切る), look (見る), kill (殺す), shine(光る), punch(パンチする), beat (叩く)
達成動詞には、同じ出来事が即座に繰り返し起こることが可能なものもあります。例えば、叩き続ける、蹴り続ける、などのように言うことができます。
動詞の分類と進行形・完了形
動詞の分類は進行形や完了形を考える時に非常に有効です。なぜなら、動詞の意味に進行形・完了形は大きく影響を受けているからです。ここでは大まかに動詞の意味の影響を説明します。
進行形
例えば、動詞の意味によって通常進行形にならないものが状態動詞でした。なぜでしょうか。それは、状態動詞は変化を表さず、ずっと同じ状況が続いていることを表現する動詞だからです。進行形の『今〜している』という意味に元々なっているのですから、進行形にならないのは納得できますね。
一方、その他の動詞の多くは変化を表すため、進行形『今〜している』にすることができます。
I am eating. 食べている。(活動動詞)
He is painting. 絵を塗っている。(達成動詞)
ただし、一瞬で到達点に達する動詞(dieやstop)については『今〜している』の意味にはなりません。そもそもの時間の幅がないためです。この場合、『〜しつつある』『〜しかけている』など、その一瞬で終わる動作を更にスローモーションで眺めているような意味になります。
He is dying. 彼は死にかけている。(到達動詞)
The bus was stopping. バスは止まりつつあった。(到達動詞)
完了形
また、完了形を考える上でも役立ちます。現在完了形は大まかに、継続『ずっと〜な状態だ』、経験『〜したことがある』、完了『〜し終えた』などの意味があります(詳しくはこちら)。それぞれの動詞の意味と、この現在完了形の意味(継続、経験、完了)には相性があります。
状態動詞は変化を表さないのが特徴ですから、ともに変化を表す完了や経験の意味と相性がよろしくありません。そのため、状態動詞(live や know)は現在完了形で使われると、自然と継続の意味になるのです。
一方、到達動詞(lose や die)は終着点がある代わりに時間の幅がなく、時間の広さを表す継続の意味とは相性がよろしくありません。終着点(終わり)の意味を示すため、到達動詞が現在完了形で使われると、相性の良い完了の意味になりやすいです。また、頻度を表す表現やbeforeとセットの場合には、より長い期間を示すことになり、経験の意味になります。
I have lost the key.
鍵を無くした。【完了】
I have lost my house key twice.
家の鍵をこれまで2回無くしている。【経験】
達成動詞(paint や make)は終着点があり、それに至るまでの時間の幅もあるものです。終着点(終わり)の意味を示すため、同様に達成動詞も相性の良い完了の意味になりやすいです。時間の幅のない到達動詞とは違って、完了進行形にすれば継続の意味にもなります。
I have painted the wall.
壁を塗った。【完了】
I have been painting for 10 years.
10年間絵を描いてきた。【継続】
活動動詞(eat や run)は終着点をもたないことが特徴です。しかし、活動動詞が現在完了形で使われると、過去から繋がる今現在に焦点が当たることで自然と完了の意味が出てきます。また、頻度を表す表現やbeforeとセットの場合には、期間に焦点が当たり、経験の意味になります。一方、継続の意味を表したいならばそのままでは相性がよろしくありません。完了進行形にする必要があります。
I have eaten lunch.
お昼はもう食べた。【完了】
I have run in the park before.
以前その公園を走ったことがある。【経験】
I have been running in the park for two hours.
2時間ずっと公園を走っている。【継続】
まとめ
Vendler (1967)の動詞の意味分類を紹介しました。さらに、意味分類から文法理解を深める考え方を説明しました。進行形と相性が悪い状態動詞が進行形にならないことや、活動動詞の性質から完了形での大まかな意味が決まることが分かると、意味理解の大きな助けになると思います。
今回の話題は、学習者に全て理解を求めるのはハードルが高いです。しかし、文法を扱う英語指導者はぜひ理解しておくべき内容です。