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もう1度、D2Cブランドは小売の原点に立ち戻りたい。

D2Cという言葉も、かなり浸透してきましたね。ブランド数もかなり増えてきましたが、全てが生き残る訳ではないでしょう。
私が所属するMakuakeでも、D2Cブランドのプロジェクトは増えてきており、今年はTakramの佐々木さんと、下記のような講座も実施しています。

私も一部で登壇しておりまして、その時の内容は下記に纏めております。

そんなわけで、毎日多くのD2Cブランドに触れている私も、良い例・良くない例が徐々に言語化できてきました。

そこで本日は、現状D2Cへの違和感をお話しするとともに、私なりに考える、D2Cブランドのマーケティングについてお話しできればと思っています。

D2Cブランドへの違和感

いきなり強いワードで申し訳ありませんが、違和感があります!
コロナで小売のオンライン化が進んだことにより、D2Cブランドを目にする機会は格段に増えました。
その中で感じたことは「D2Cを魔法の言葉か何かと勘違いされているのかな」ということです。そして僕の違和感は、下記のTweetに集約されています。

要は、D2CだろうがB2Cだろうがオンラインだろうが店舗だろうが、結局はモノ売りなので、顧客の求める商品を、最適な価格、場所、宣伝で提供しなさいよ、ということです。
どことは言いませんが、どうもここを履き違えたブランドがここ最近多いなー、と感じておりました。中でも、特に感じている違和感について2つほど言及したいと思います。

・違和感① :似通った世界観デザイン
1つ目の違和感は、デザインについてです。「D2C=デザインを今っぽくすること」という感覚をお持ちの方が多い気がしております。
もちろん、デザイン変更はリブランディングにおいて重要であり、D2Cを実施するタイミングでのデザイン変更は有効です。
が、手法に囚われすぎている気がしてなりません。大型の資金調達をしたD2Cベンチャーが、キャッシュをデザインファームに打っ込む例もよく見る光景です。本当に、まずデザインなのですか?

加えてデザインに関して思うのが、なんかどこも似てません?笑
独自性のないデザインはブランド想起を図る上でプラスにならない、どころかマイナスですらあります。似たデザインにすることで、広告を打っても別ブランドでコンバージョンする可能性があるからです。(宅配ピザで例えると、ピザハットのCMを観て、ピザーラて注文されてしまうイメージです)
下記では、歯ブラシのD2Cブランドを例に、「デザイン似すぎ問題」に言及されています。

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いや、もうどれがどれだか分からん!w
デザインにお金をかけた上で似通ってしまうのは、とてももったいない気がします。


・違和感②:ESGの猛プッシュ
もう1つの違和感は、ESGのプッシュです。ESGに関する取り組みは素晴らしいですし、1つでも多くのブランドに取り組んで頂きたいのですが、「D2C=ESGを意識すること」と勘違いされているのかも、、という事例がみうけられます。

もちろん、ESGは大切な観点なのですが、それが「供給者側のエゴ」となってしまってはなりません。D2Cもモノ売りですので、あくまで商品として成立した上でのESG提唱でないと、ブランドは持続しないように思えます。
(ESGとブランド・ロイヤルティに関しては、下記の記事が参考になります。)

また、消費者心理的にも、必ずしもESGが効果的出でないといい議論もあり、下の記事で詳しく話されています。

また、チョコレートブランドMinimal山下さんは、下記のように言っております。

新商品のPRでよく見られるのが、「ここが新しいんです」「ここを変えました」と差別化要素ばかりを強調する手法です。これは建物に例えると2階に当たると考えています。もちろん2階も大事ですが、あくまでもベーシックな機能である1階が土台として安定しているからこそ、2階が活きてくるわけです。2階の差別化要素だけに注力しすぎて、1階がおろそかなままでは、カルチャーとして根づく前にトレンドで終わってしまいます。

ESGは、上記で言うところの「2階」にあたるため、1階を疎かにした状態で提唱し続けても、一過性のブランドとして忘れ去られてしまいます。
「あくまで2階」ここを意識することが重要だと考えます。

Makuakeで起きている事象

Makuakeのプロジェクト(特に地方)はメーカーからの直販が多いので、それこそD2Cブランドが多く(月に500件くらい)生まれています。その中で、デザインが凝っている、何かエシカルな文脈の中で生まれたプロジェクトが上手くいくかと言うと、必ずしもそうではありません。

下記のプロジェクトは、焚き火台のジャンルでMakuake歴代1位なのですが、ページのデザインが洗練されているか、あるいは何かESG文脈が書かれているかというと、そうではありません。

むしろ、あるがままの機能紹介がほとんどで、作った理由も「キャンプが好きだから」です。
それでもここまでの応援購入が集まったのは、プロダクトとして優秀であり、手頃な価格で販売されているからです。商売の本質を見た気がしています。

この上で、デザインが洗練され、また環境配慮などがあると、このブランドへの愛着は更に高まるでしょう。(デザインや環境配慮が要らないわけではありません、小売として見たときの優先順位の話をしています)

結局は、プロダクトに帰着する

先述した違和感や、Makuakeで起こっている現象を見ていて、D2Cブランドも(他のブランドも)「プロダクトをどう磨くか」に帰着するな、と改めて思いました。
「LPのキービジュアルはどういうのがいいですか?広告の配信面はどこが効果良いですか?どういったストーリーが刺さりますか?」といったご質問、もちろんお気持ちは分かるのですが、本当にプロダクトを磨き切りましたか?プロダクトが良い、という前提がないと、例え小手先のテクニックで売れたとしても、その後がありません。口コミなどのUGCが生まれないどころか、負のUGCを生む可能性もありますし、リピートなんてしてくれるはずもありません。

Makuakeを1度ご実施頂いているMr. CHEESECAKEの田村さんも、下記のように仰っています。

まずお伝えしておくと、僕はあくまでも「ものづくりの人間」として仕事をしているので、マーケティングや売り方の話が先行するのはすごく嫌なんです。ストーリーテリングすれば売れる、とか。そんなわけねーだろ、と思っています(笑)。
まず、真摯にものをつくることが一番大切。その上でマーケティングやファンコミュニケーションを大切にしている、というだけです。
(中略)
2021年1月に、僕たちは販売サイトをリニューアルしました。そのタイミングで「ブランド」についてもデザイナーやエンジニアとかなり深く話し合ったんです。その時に僕から伝えたのは、「世界観」よりも「商品」を届けたいということ。

詳しくはこの記事にまとまっていますので、ご興味ある方は是非。

という訳で今回はバズっている「D2Cブランド」に私の視点からメスを入れさせて頂きました。この辺りはもう少し掘れるので、また書こうと思います。

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