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夜路を歩く


吐いた息は白く濁り、すぐ黒に溶けた。
シンと静まり返った住宅街を抜けると、街道にはこんな時間にもトラックが走っている。


こんばんは、はちみつ色の秘密です。
こないだ夜の道路を散歩したので、今日はその時のルポを書きたいと思います。
(恥ずかしながら不勉強でルポが何なのかよく分かっていませんが、この世は愛こそが全てだと分かっているので大丈夫です。)


オレンジ色の街灯が道路とトラック、そして僕を照らす。この街の夜は明るい。
僕は暗い夜の方が好きだ。夜道の手がかりは月明かりだけでいいとさえ思っている。
稀に、「じゃあサバンナで暮らせば?」などと戯言を言う輩がいるが、そんなん嫌に決まってんじゃん言わなくても分かんじゃん。

昔、そういう町に住んでいたことがある。
街灯がほとんど無く、夜になれば町全体を闇が包み込んでしまう小さな町。
僕はその町を『デス・ソサエティ』と名付けた。
ちなみに町には既に深原町みはらちょうという名前があったため改名を打診したのだが、町長いわく「なんだ君は」とのことだ。

当時の僕は賃貸アパートに住んでおり、大家を見かけるたびに膝の上に乗せたり人参を与えたりしていた。
そんなある日のこと。
いつものように人参やキャベツの芯を持って大家の部屋を尋ねると、彼は声を震わせながら
「い、いい加減にしなさい!私はうさぎじゃありません!!」と怒りだしたではないか。
そこで僕が「その通り。貴方は貴方だ。」と彼の肩を抱くと、大家は大粒の涙をこぼしながら、「君は…壊れている」と泣きだしたのだった。

翌日、町から出ていくよう町長と大家が懇願しにきたので僕は町を出た。
たまにデス・ソサエティの事を思い出す。
あそこは僕にとって第二の故郷のようなものなのだ。


そんな事を懐かしんでいるうちに駅の辺りまで来ていた。
駅前の商店街は静かに眠っている。スナックが1、2件営業しているようだったが、それももう閉まる頃だろう。
道中、どう考えても人間ではないナニカとすれ違ったが圧倒的な暴力で制した。
強大なパワーの前には何者も無力である。これは僕の持論だ。「北風と太陽」の北風から着想を得ている。


ここで折り返して家へ戻るとしよう。
特に意味はないが走って帰った。


以上、僕のルポでした。
(ルポってこれで合ってるのか分かりませんが、人との出会いは一期一会だと分かっているので大丈夫です。)

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