近所にヘリが降りてきた
今日は午前中のうちに昨日収録してきたインタビューの文字おこしだけでも終えてしまおうと思い、いつもの海沿いのコースを走ったあと、はやめに机に向かって、ノイズキャンセルのヘッドフォンを付けて作業をはじめたのだ。猫はまだ寝ていた。
しばらく作業をしていたら、なんだか外が騒がしい。
バリバリというヘリのプロペラが空気を振動させている。ヘッドフォンを外したら消防車のサイレンも聞こえた。僕の家は海が近いので、たまに事故があるとヘリが飛ぶことがあるのだけれど、こんなに集まってくることはめったにない。
なにかあったのだろうか。テープ起こしを中断してTwitterで「茅ヶ崎」「海岸」あたりを検索したら、どうやらヘリが不時着したのだという。
ヘリが不時着?
しかも一報の写真を見るに、なんとなく見覚えのある景色なのだ。というかうちのすぐ前の海岸だろうこれ。さっきまで僕が走っていた場所である。不時着ってどういう状態のことを言うんだろう。乗っていた人大丈夫なのか。
とにかく行ってみることにした。
家を出たら騒がしさが3倍くらいの音量で襲い掛かってきた。頭上を旋回するヘリからの振動で髪が逆立つ。
この先に僕がいつも走っているコースがあるのだけれど、すでに立ち入り禁止となっていた。
そりゃあヘリが不時着してるんだから近づいたら危ないのだろう。でもこんなに大騒ぎになっているのだ、近くに住む身として、いちおうどうなってんのか知っておきたい。
どこか見える場所はないかなと海沿いの林道を歩いていると、おじさんが「にいちゃん、こっからよく見えるぜ」と誘ってくれた。
目の前の砂浜にでかいヘリがとまっていた。プロペラは回っていない。
不時着というから半分くらい浜に埋まっちゃってたりするのかなと心配したのだけれど、見たところそんなこともなく、普通に着陸した感じだった。いや、普通じゃないな、すぐそこは住宅地だしランニングコースだしおれいつもここでサーフィンしてるし。
これ以上近づけなかったのでその場で見ていたら、警察の方々が離れるように、と指示しながらロープを張っていたので、邪魔にならないよう家に帰ってきた。
***
なんとなくすぐにテープ起こしに戻る気にもなれず、ちょっと早いけどお昼を食べた。
食パンに井村屋のあんバターを挟みコーヒーを入れる。家に帰ると外の喧騒がうそのように、守られたいつもの日常があった。猫はまだ寝ていた。
ニュースを見たら不時着したのはアメリカのヘリだったらしく、そうなると乗組員が無事だったのか、原因がなんだったのか、詳細は不明となるのだろう。沖縄でヘリが落ちたときにも近くに住んでいたのだけれど、あのときもそうだった。
温かいコーヒーを飲みながらパンを食べていても、なんだか砂浜のヘリを思い出してドキドキした。いつもの風景にでかいヘリがあるだけでこんなに不安になるのだ。
何もないことが一番だけれど、こういうことがあった時には、平和な日常の貴重さと、それを維持するためには何を考えてなにをしたらいいのか、少しだけ考えてみてもいいのかもしれない。
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