#10 お茶の町と茶道
1.東彼杵のお茶戦略について思うこと
東彼杵はお茶の町です。特産品の蒸し製玉緑茶は日本一を何度も受賞しています。確かに美味しい。1時間に1本(2両編成ばかり)程度の利用者しかないJR彼杵駅のプラットホームには誰に見てもらいたいのかよくわからない受賞看板が掲げられています。看板の出来の良し悪しは再考の余地ありますが、なぜここなのか?
行き交う通行人が多い品川駅とか博多駅、せめて長崎空港ロビーなら掲げる価値はありますが…。看板の主は東彼杵町役場。行政職員、もっと考えましょう!
今、急須でお茶を淹れて飲む人はどれくらいいるのでしょうか。東彼杵がお茶の産地であると説明をすると、
「私、お茶、好きです!」
と、鞄からペットボトルを取り出して笑顔で応じてくれる若い青年。ペットボトルに入ったお茶が自動販売機やコンビニで買える時代。急須は不要です。
サラリーマン時代を振り返ってみると、お客様との打合せにはお茶は勝手に出てくるし、新橋や神田で飲み歩いていたときには
「温かいお茶、もらえる?」
とタダ(無料)のお茶を要求し飲んでいました。
私にとってお茶は”サービスで飲めるもの"という認識です。ランチで食後のコーヒーは対価を支払うのに、ディナー後のお茶はタダ。この行為がお茶の価値を下げているのです。
タダのような価値と思われがちなお茶を”普通”の戦術でお茶の町PRをしてもダメなのです。価値を見出してくれる市場にPRすることが正攻法と思うのですが、私の見解が世間からずれていないことを確かめてみます。
2.第三者の意見
日本茶BANKというサイトを参考にお茶の情勢を見てみます。
まず、生産量。減ってます。日本人はお茶を飲まなくなったのでしょうか?
次に、緑茶と茶飲料の年間支出金額。総額に変化なし。
支出金額に変化はなく、リーフ茶が年々使われなくなっています。生産量が減って単価が上がっていることが読み取れますね。
最後に、意外なデータ。
コロナ期間中の巣篭もりでペットボトルを買いに行けない環境があったことが契機となり、
「私、お茶、好きです!」
と言っていた若い世代が茶葉からお茶を淹れて飲むスタイルを取り戻しつつあるということ。
私なりに推察すると、急須でお茶を淹れる文化がなくなっているのではなく、日本人にとってお茶があまりにも身近で安易(飲食店では無料で)に手に入れることができるため、余程のことがなければ茶葉からわざわざ淹れない。でも、何かのきっかけがあれば(もしくは、市場を動かすコンテンツを作れば)お茶はまだまだ可能性があるとも言えます。私が唱えた”価値を見出してくれる市場にPRすること”につながりますね。
3.テーブルスタイル茶道
私が万博を使い倒せ!と、言い出した背景(以下#4参照)には、
「大阪・関西万博の中で何らかの形でPRできれば、そのぎ茶の価値を見つけてくれる人たちが必ずいる」
と確信があったからです。
その戦術は見事にはまりました。中でもテーブルスタイル茶道は、私が知っている堅い感じの茶道イメージを変えてくれました。和装で凛とした雰囲気は表千家、裏千家の茶道のイメージと重なりますが、何より最近は生活習慣の欧米化によって正座ができない世代の方が増えている中で、時代に合った多様性を受け入れる茶道として成長されていく事業なのだろうと市場の伸びと手応えを感じます。テーブルスタイル茶道の他にも、市場を先読みした新しいお茶のコンテンツを少しでもたくさん繋がりを持っておきたいと思います。
4. 令和の抹茶騒動
ところで今、海外では空前の抹茶ブームだそうで、抹茶を製造してもすぐに売り切れるそうです。出張で京都を訪問した際、四条河原町のデパ地下で複数のお茶屋さんの口から飛び出た言葉に驚きました。
「開店前から抹茶を目がけてきた外国人が店の外に並ぶ」
「1人1個の個数制限をしても2時間以内に完売」
今年は令和の米騒動と騒がれましたが、否、ここでは令和の抹茶騒動です。日本人はいつも判断が遅いと言われますが抹茶も同様です。「投資判断をもたもたしていると機会損失をする」とは、私が以前半導体業界にいたときに散々聞かされた話でしたが、後々残念なことにならないよう抹茶製造メーカーさんは是非がんばっていただきたいものです。
5.次回予告
お茶を飲めば、甘いお菓子が欲しくなる。
次に辛いお菓子も欲しくなる。
するといよいよ酒が飲みたくなる。
次回は、酒場です。