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種を蒔く人

その人は
今日も黙々と種を蒔く
種を蒔くことがその人の仕事だから……

来る日も 来る日も
人々の心に足を運んでは
痩せた土にくわを入れ
枯れた田畑をうるおして
いつも両手一杯に抱えた種を
蒔けるだけ蒔いている

喜びの中にっても
哀しみの中にっても
いつかかえるその日まで
ひたすら蒔き続ける……

ある時 
蒔かれた種のひとつから
小さな芽が顔を出す
やがてその芽は大きな樹となり
かぐわしい花を咲かせる

  白蓮華びゃくれんげの花 

     分陀利華ふんだりけの花

色も、形も、大きさも、様々に違えど
咲く花はみな同じ花 念仏の花 

一度咲いたら
二度と枯れることがない
正定聚しょうじょうじゅ不退転ふたいてんの花


その人は
今日も黙々と種を蒔く

念仏の花咲く種を 
有縁うえんの人々の心に蒔き続ける……

 南無阿弥陀仏
  南無阿弥陀仏

ここにもひとつ大輪の 
念仏の花 咲いた 咲いた


~我が恩師、久保光雲師へ捧ぐ~



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