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アニメ漫画『メダリスト』あらすじ感想

『メダリスト』の世界に行ってきました。

作者:つるまいかだ

『月刊アフタヌーン』にて2020年7月から連載開始。

2021年に開催された「第5回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」9位の受賞から始まり

2022年
「第6回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」3位
「次にくるマンガ大賞2022」コミックス部門第1位
「マガデミー賞2022」結束いのりが主演女優賞

2023年 第68回「小学館漫画賞」一般向け部門

2024年 第48回「講談社漫画賞」総合部門など、様々な賞を受賞している注目の作品です。

漫画の他にも小説、アニメと展開され2025年1月から放送中。

夢を諦めた元フィギュアスケート選手の明浦治司と

スケートに憧れながらも、堂々とその道を進むことができずにいた少女、結束いのり。

偶然に出会った二人が力を合わせて、世界一を目指す物語です。


あらすじ


日本選手権大会、アイスダンスの出場経験がある元フィギュアスケート選手、明浦治司(声:大塚剛央)。

彼は現役引退後プロスケーターを目指すも、アイスショーのオーディションに落ち続け26歳になっていました。

形を変えながら、なんとかフィギュアスケートにしがみついている司ですが

ある日彼のもとにアイスダンスの元パートナー、高峰瞳(声:加藤英美里)からスケートクラブのコーチにならないかと紹介されます。

「ルクス東山FSC(フィギュアスケートクラブ)」。

そこで司を待っていたのはスケートに憧れる少女、結束いのり(声:春瀬なつみ)との出会いでした。


いのりのスケートに対する思いの強さに触発され、司は彼女のコーチになることを決意。

「全日本選手権に出場できる選手にしてみせます!!」と、いのりの母に誓います。

・・・

胸にくる場面の多さ。

氷の上の勝負に全てを懸ける少女たちによって、言葉にできないスポーツの感動が次から次へと湧き上がってきます。

スポーツ漫画を、まだそこまでたくさん読めていないのですが

かわいい女の子たちがここまで熱く競い合う作品はなかなか無いんじゃと。

様々な賞を受賞されているのも、読めば納得せずにはいられない。

デビュー作であることに仰け反りそうになる、希少な輝きを放つ作品でした。


遅いスタートを切ったいのりと司の物語


スケートに憧れるいのりは、学校に馴染めない内気な女の子。

ワケあって校内でミミズを集めていれば、同級生には引かれ

親からも「何もできない子」というレッテルを貼られたことで、すでに自信喪失。

彼女の思いは、うちにうちにと閉じ込められるようになっていきます。


そんな中で、彼女のスケートへの憧れを知る人はただ一人。

ミミズを持ってくればこっそり滑らせてくれる約束をした、スケートリンクの受付のおじいさんだけでした。

・・・

本当にやりたいことが思いきりできない環境でも、抑圧された情熱はいのりの中で増幅していきます。

こうして彼女がスケートを習い始めることができずにいる間も

先に始めた選手たちは練習を重ねて前進していっていました。


小学5年のいのりの年齢は、本気で選手を目指すにはギリギリなんだそう。

いのりは遅いスタートを切った選手なのです。


遅いスタートというハンデは、この先ずっと彼女に付いて回ります。

ですがいのりの場合は、抑圧された思いがリンクへの強い執念となって

どんな困難も乗り越えていこうとする爆発的なエネルギーへと変化。

ハンデを諦める理由にしないという彼女の強い意志は

14歳からスケートを始め、ハンデに苦しんだ司の影を越えていくことになります。

・・・

また本作はいのりの成長だけでなく、司のコーチとしての成長の物語でもありました。

かつて抱いたスケートの夢をいのりに託し、リンクの氷も溶かしそうな熱量で指導にあたる司。

指導に全力を注ぐうち彼自身も能力を発揮させ、自分と向き合わざるを得なくなってきて…と。

前から気づいてはいても結果が伴わず、認められないでいた自分の才能。
 
司の才能によるサポートあっての、いのりの成長なのでした。

・・・

いのりと司が強くなれば、周りから注目されるのは自然なこと。

そしてその中には司が憧れていたオリンピックの金メダリスト、夜鷹純(声:内田雄馬)の姿もありました。

夜鷹も今では現役を引退し、いのりのライバルである狼嵜光(かみさき ひかる/声:市ノ瀬加那)のコーチを務める謎めいた人物です。

そのような人たちが現れるようになり、間近で見せつけられる実力の差。

そんな環境でスケートと関わり続けていれば、司のフタをしていた部分も目立つようになっていき

彼個人にも越えなきゃならない壁が立ちはだかるようになっていました。

・・・

他にもいのりの周りにはスケートの関係者を始め、たくさんの人たちが集まってくるようになります。

その中には最初の関門になっていたお母さんの姿もありました。

始めは見ていてグツグツくるお母さんの様子でしたが、それなりの事情があってのこと。

スケートを本格的に始めるにはかなりの費用が掛かります。

リンクの上でいきいきと輝く娘のために、裏で支える親の姿。

様々な面からいのりを取り巻く大人の姿が描かれることで、大人でも十分に楽しめる内容になっています。

また小さな体で背負っているものや環境の恩恵など、表舞台からは見えない選手の物語も描かれている作品でした。


膨大な練習量に比べたら、大会の演技時間はほんの一瞬。

けどそこに至るまでのストーリーに、周りの人たちと一緒にいのりを応援したくなっていく。

闘ういのりに心揺り動かされる大会が待っています。


いのりのライバル狼嵜光の存在


いのりには背中を追い続ける目標となる人物がいました。

友人でありライバルでもある同い年の少女、狼嵜光です。

光が滑った後のリンクを滑りたがる人はまずいません。

彼女の圧倒的なスキルに、会場の空気が変わってしまうほど。

その空気に飲まれることなく滑り切るには、こちらも余程の能力が必要でした。

出場した大会全てで金メダルを獲得するほどの実力の持ち主です。

一人先頭を走り続ける光。

多くの人が彼女に圧倒され萎縮してしまうのですが、いのりは違っていました。

光が言うには、いのりはちょっとおかしいから強いのだそう。

真正面からライバルとして彼女に向かっていけるのは、いのりくらい。

彼女は光にとって、胸の奥底に渦巻くものを刺激して止まない貴重な存在なのでした。

・・・

そして光も司のようにいのりの可能性に気づいていた一人です。

だからこそ光と司はぶつかり合う関係にありました。

いのりは周囲の人たちの思いを背負ってリンクに立っていましたが

光はそれ以上の重圧に耐えながら、より高いところに到達するためならどれだけの犠牲を払うことも厭いません。

けど犠牲を払っても負けることもあれば、払わなくても勝てる道があると

そういう信念をもっていたのが司です。

自分も何かすごいことを成し遂げた人は、みんな何かしらの代償を必ず払っているのだと思っていました。

司がいのりに犠牲的になってほしくないのには、夢に敗れた過去があるからこそ。

けどその思いが、今の何かが足りてないいのりにストップをかけてしまっているのか。

それとも本当に犠牲を払わずに、いのりが勝利を手にすることができるのかもしれないと

二人を見てるとそう思えてくる瞬間もあります。


周りの人の色々な思いが込められた祈りに、彼女はリンクの上でどう応えるのか。

まだいのりが自覚していない彼女の可能性に期待が膨らむ、先が楽しみな作品です。


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