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100均のボードゲームに見る、システムのバランス調整について。
さて、今回も続いていきます。100均で買ったボードゲームの解剖ですが、今回はこのゲームを取り上げたいと思います。ダイソーから出版されている、「七つの秘宝」というボードゲームです。
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ドラフトで手札構築
ドラフトとは
ドラフトとは、日本と海外で用語の差異があるが、日本では、以下の行動を指す。
配られたカード枚数から1枚、カードを選ぶ
そのカードは手札に入れ、残りのカードを伏せて、時計回りか反時計回りに他のプレイヤーへ回す。
1から繰り返し、規定の枚数までカードを取ったら、後は山札へ戻すか、プレイから除外する。
この方法だと、配られたカードの強さの偏りがプレイヤーの選択により少なくなるという利点がある反面、2人プレイのゲームに組み込みにくいという欠点がある。代表的なドラフトを用いたゲームは、ドラフトそのものがゲームの要である「7 Wonders」や、「アグリコラ」の小進歩カードや職業カードの偏りを無くすためにドラフトを用いていたりする。このゲームでは、配られた7枚のカードをドラフトし、最後の1枚まで手札に入れる(山札に戻す行為や捨て札は無い)ルールを採用している。
カードに関する様々な能力
ゲームの核心までネタバレしてしまうので、あまり書けない部分もあるが、このゲームはドラフトした7枚のカードを一定のプレイをすることで勝利点を稼ぐというゲームである。のだが・・・。
この中にルールの均衡を崩すカードがいる
このゲームには題名の通り、7つの「秘宝」と、それに付随した「能力」があり、そのうち1つはチーム戦専用の能力であるため、個人戦では6つの能力の中から最低5つを選んでゲームをすることになっている。その中の「知識」という能力があり、以下の通りである。
この手札を捨て札にした場合、山札から1枚カードを引き、手札に加える
この能力の何が均衡を崩しているかというと、「ドラフト」で均したはずの手札のパワーバランスである。山札からなので弱いカードを引く可能性もあるが、強いカードを引く可能性もある、という事が問題なのである。あとは「山札から引いたカードがまた知識のカード」だったりすると、連続手番となり、他プレイヤーに「ダウンタイム」(端的に言えば、待っている時間)を発生させることに成り得る。
能力の盛り方の難しさ
これはトレーディングカードゲーム(以下TCG)をやっている、もしくはやっていた人には分かる事だろうが、とあるカードが強すぎて禁止カードになってしまった、という経験をしたことは無いだろうか?あれは大体能力の盛り方に原因がある。(その他、プレイするコストが安すぎる等の問題も有ったりするが)、そのゲームカード1枚を見ればバランスの良いカードと思っていたとしても、TCG全体からみると、俗に言う「壊れたカード」になる可能性は十分にありうる問題であり、ゲームデザイナーが頭を抱える問題なのである。筆者は高校生の頃、マジック・ザ・ギャザリングに嵌っていて、「壊れたカード」が満載の「ウルザズ・サーガ」ど真ん中の世代だったが、このシリーズを作ったデザインチームが「社長室に呼び出され、怒られた」逸話が忘れられない。この「七つの秘宝」はTCGではなく、「知識」の能力も別段「壊れたカード」ではないが、せっかくの「ドラフトでバランスを均す」ルールの均衡を崩してしまうカードである事は否めない。
で、このゲームの総評は?
最後に、このゲームの総評であるが、
「ゲームバランスをドラフトで均すアイデアや、手札のプレイ方法、手札の読みあい等、とても面白く出来ているのだが、知識だけは能力の盛り方を考える余地が有った」
という感じだろうか?それが気にならなければ、難易度やプレイ時間から見ても、とても良いボードゲームだと思う。
あとがき
さて、いかがでしたでしょうか?個人的にはこのゲームの「能力の盛り方」については今後、ゲームデザインをすることが有るならば、避けては通れない問題を考えさせられたな、という感じです。世に出回っている名作と呼ばれるボードゲームでさえ、「このカードは強すぎるからローカルルールで除外する」なんてことが有ったりしますし。(ボードゲームアリーナにおけるウイングスパンのカラス2種禁止ルールとか)
さて、順調にいけば、私が精査する100均ボードゲームは残り2つとなりました。今のところ「イチジュウサンサイ!」以外はとてもゲームのメカニズムが良く出来ていて、
「今のゲームデザイナーはこれを超えていかなければならないのはレベルが高いのだなぁ・・・」
と思っています。