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秋の大井川へ

霧も消えぬある秋の朝、大井川鐵道へ行くことに決めた。其の儘の勢いで電車に飛び乗り、松田で御殿場線に乗り換えた。

松田駅に進入する御殿場線普通

乗り換えた御殿場線は、案外バックパックを背負った中高年の人々で活況を呈していた。きっと富士山に登るか、山麓のゴルフ場にでも向かう人々なのだろう。電車は霧深い渓谷をかっ飛ばして、一路沼津へ向かう。御殿場の駅が近づいてくると、人々はどこか忙しなくなってくる。御殿場では、バックパックを背負った人々と入れ替わりで大勢の学生が乗り込んできた。ここを過ぎればあとはガラ空きになるであろうと予想していただけに少しびっくりした。


沼津駅

沼津で東海道線に乗り換える。這入って来たのは、313系の6両編成。ロングシートで金谷まで行くことになりそうである。

沼津駅に停まる東海道線普通

うつらうつらとしながら、富士、由比、静岡と通過し、2時間の長い長い旅路を終え、金谷駅に着く。



金谷からは、いよいよ大井川鐵道に乗る。さて、本命は「ズームカー」こと21000系。何が這入ってくるか、ドギマギしながらJRの駅の片隅にあるホームで電車を待つ。

7200系

這入って来たのは7200系。元東急7200系で、2012年に廃止された十和田観光鉄道から譲渡をされた車両だ。正直言って、私はこの切妻の増設運転台が好きではない。機能美ではあるかもしれないが、「必要十分」という改造思想が透けて見える。鉄道車両を使って商売する鉄道会社たるもの、多少は車両の美しさに気を遣ってほしい、というオタクの雑言は置いておいて、来たものは仕方がないので乗る。目指すは家山駅。全列車が停車し、金谷、新金谷と家山のみが有人駅であることからも、この駅の拠点性が伺える。


家山駅舎

区間急行とやらに乗り、家山駅に着いた。平家ながら、瓦屋根の風格漂う駅舎である。家山で降りて目指す先は、一つ川根温泉側の抜里駅である。目指すも何も、乗って来た電車で行けばいいじゃないかと思うが、「区間急行」は止まらない。その上、データイムには普通列車自体全く運行がない。しかし、抜里駅付近は茶畑が広がり、絶好の撮影地である。それを踏まえ、家山から抜里まで徒歩行軍を敢行することとした。
然し、此れが過ちであった。


地図上では、家山と抜里の集落は少しの丘陵を隔てて隣接しているように見える。正直行軍を決めた時点で、自分の中ではせいぜい1kmかそこいらの行程だろうと思い込んでいた。実際の所、歩くと3kmあった。しかも、標高差は30m前後もある。30mというのは数値で聞くと大したことないように聞こえるが、いざ歩くと立派な峠越えである。

国道473号
道端の彼岸花 

苔むし、鬱蒼とした森の中を延々と歩かされ、あわや発狂するかと思った。知らない土地で変な旅程を立てては行けない。そんな事がありつつも何とか生きて、抜里の集落に辿り着いた。


大井川鐵道の本来の名物は、ズームカーではなく、SLの動態保存である。最近、C10がリバイバル仕様になったらしいので、少し気になる所である。茶畑の中、流し撮りでSLを迎え撃つ。

一番マシな画でも、碌に合焦していない

結果はご覧の通りである。リバイバル仕様の白手摺のおかげで大井川のC10を撮ったのだなと分かるのは不幸中の幸いかもしれない。


流し撮りを派手に失敗してやる気を無くし、16時まで電車が来ないので、已む無く家山に戻ることにした。峠道を越えて、何とか家山に生還した。

家山の駅前通

さて、はっきり言って狙いは16時台の普通列車のみであり、SLがどうなろうともどうでも良かったたのだが、ブレブレの流しだけでは締まりが悪いので、折り返しを鉄板撮影地でしっかりと決めておく事とした。選ばれたのは家山橋。名前から分かる通り、家山駅からもほど近い有名撮影地である。

かわね路3号 家山橋にて

通過時には汽笛でも鳴らすだろうと思って、直前までTwitterを見ていたらいきなり来た。撮影地で気を抜くと碌な事が起きない。光線は悪いが、咄嗟に撮ったにしては悪くないのではなかろうか。


さて、肝心の16時台の普通列車を撮る。こいつに21000系が充当されるか否かが、最大の関心事だった。家山駅手前のカーブをアウト側から撮る。さて、肝心の運用は…

家山橋にて

…7200!お前じゃねえ!と本気で思った。この顔で単行は違和感がありすぎる。こればかりは運なので仕方がないが、片道3時間かけて来てこの仕打ちには納得しかねるが、仕方がないので折り返して来た7200で、金谷に戻る。

家山駅にて

金谷に戻り、東海道線でひたすらに長い道のりを帰る事になった。

金谷にて


追記:今年9月のダイヤ改正を以て大鉄の電車運用は一運用のみになったようです。

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