夕暮れ走り

東京メトロ千代田線乃木坂駅、ホームの代々木上原駅寄り端にある改札を抜け地上に出た。
目の前には青山霊園が広がり、霊園の外周道路を西麻布方面に歩いた。
途中、西麻布という場所柄に似つかわしくない、それでも人気のあるラーメン屋の前を通り、交差点を渡った。

古く「霞町」と呼ばれたエリアの細い路地にある店で、花見と称する割には全く花が見えない閉ざされた狭い空間で、杯を傾けた。

数時間後、店を出、首都高の真下に並ぶ六本木通りを渋谷方面に歩いた。歩道を行く人は全くいない。店もない。ただ車が行き交う道路をひたすら歩いた。

まもなく渋谷に着く手前、側壁に唐突に現れる店への入り口と、赤く照らされた店内をうかがわせるウインドウ、外国人が多く訪れるバーがある。入ろうかどうか、しばらく店内を窓越しに眺め、そういえば英語が全く話せないことに気づき、自分の情けなさに落胆しつつも、明日の撮影に向け、パーカーのフードを被り、小走りに渋谷の谷を下った。