猫の手を借りる
駅から家への夜の帰り道。
途中、コンビニに寄って買い物をした。
ところが、小銭入れがない。
あれ?会社に忘れた?
でも、使った記憶もない。
落とした?まずいなぁ。
まぁ、小銭だし最悪仕方ない。来週探そう。
コンビニを出て、家へ向かった。
歩いていると、いつもいる野良猫に出会った。
交差点から交差点のひとつのブロックを縄張りにしているのか、縄張り以外では出会わない。
野良猫といえ、妙に人懐っこく、いつも誰かが撫でたりしている。
それでも逃げる素振りもなく、目を閉じ、なされるがままにじっとしている。
野良猫は、車も人も通らない夜の道の真ん中を、どこに行くのか一人で悠然と歩いていた。
おい、そんなとこいたら危ないぞ。
声をかけてみた。
ミャー
こっちを振り向き応えてきた。
そして、私に近づき、脛の周りに身体を擦り付けてきた。
暑いなぁ
ミャー
元気か?
ミャー
腹減ったか?
ミャー
何を言ってもミャーと応えてくる。
お、そうだ。今忙しくてな、手を借りていいか?
ミャー
冗談だよ。
ミャー
ほんとに猫の手借りたら大変だよ。
ミャー
じゃ、またな。
ミャー
そう言って別れた。
でも、もしかしたら、ウチのメンバーより素直で役にたったりしてな。
人間に化けて、出てきて手伝ってくれてもいいんだぞ。
そんなことを思いながら、家のドアの鍵を開けたら・・・
小銭入れがシューズボックスの上に鎮座していた。
おしまい