ツキのある物
何かを初めてやる時、形から入るタイプの人がいる。
私もそれに近く、例えば、ウォーキングを始めた際、上から下までNIKEで揃え、格好だけはそれっぽくなった。
しかし、歩いてしまえば、ただ歩くだけだというのに気付き、NIKEである必要はなく、歩きやすければなんでもよくなった。
むしろ、ある程度小慣れてきた頃に、本当に必要なものは何なのか、初めてそこで理解できる。
それは頭で理解しつつも、学生の頃から同じことの繰り返しで、その度に一瞬反省はするものの、よーし頑張るぞ!!と思った時には、反省をすっかり忘れ、また形から入ってしまうのだった。
よーしコーヒーを極めるぞ!!と始めたのが、二十年くらい前。
コーヒーの右も左もわからない中、最初に買ったのがドリップポットだった。
ポットにも色々種類がある中、単純にプロっぽくかつ形が綺麗なポットを買った。
お湯を注ぐのに必要だろ、ぐらいのなんとなくの理由でしかなかった。
ところが、これまでのケースと違い、このポットは使い続けた。
使い続けもう二十年以上。
さすがに「普段コーヒーを淹れる」役割からは引退したが、お湯を沸かす、大量にコーヒーを淹れる、その役割は今でも担っている。
今や、ポットに付いていた兎のマークももはや消え、赤い塗装もところどころ剥げている。
だが、極めて丈夫で、愛着のあるポット。
これだけは、形から入った物とはいえ、他の器具が何度も代替わりする中、唯一使い続けている。
形から入っても大丈夫じゃん、という唯一稀なケース。
月にいる兎のように、ツキのあるポットをこれからも大事に使っていくとしよう。
こんな物
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