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"高度観光人材"になるために。

観光は"光"を"観"ると書く。

まさに国の光を観るために観光業は存在する。しかし、光を観るためには、太陽を直視できないように眩しすぎても、消えるか消えないかの線香花火のように暗すぎてもだめ。ちょうど良い光をつくることが大切だ。

今、日本観光は太陽と線香花火の二極化が発生している。人気観光地ではオーバーツーリズムで観光客や地域住民の満足度が上がらずせっかくの素晴らしい観光資源が存分に生かされていない。反対に、素晴らしい観光地であるのに線香花火のように消えかかってしまうような場所も存在することが事実である。

「ヒト・モノ・カネ」という経営資源の三要素を念頭に置いた時に、最も大切なものは「ヒト」だろう。ヒトがモノやカネを作る。そして、コントロールできる割合が大きく、ヒトがとてもとても貴重な存在である。

国の光を観るために、あしらいを作り、光量や角度を調整するヒトこそ、「高度観光人材」であり、今最も求められていると感じている。


1.高度観光人材に求められるもの

観光庁は、2022年に「ポストコロナ時代における観光人材育成ガイドライン」を策定し、これから日本に必要な観光人材の定義を行った。国の最大目標である2030年に訪日外国人数6千万人を突破するために、日本観光の根幹を作っていく行政やDMOにとって重要な人材目標の定義で言えることは間違いない。

ポストコロナ時代における観光人材育成ガイドライン(概要)から抜粋

経営、マーケティング、マネジメントとのスキルが定義されているが、大前提としてこの辺りの知識、経験は必須であると言えるだろう。私自身も現職の実務を通して、日々勉強させていただいている。

●時代背景に合わせたキュレーション

しかしがながら、これ以上に大切だと思うのが「地域の文化・歴史」を汲み取り、時代背景に合わせてキュレーションしていくことだと考えている。

観光資源を時系列で並べると大きく2つの要素が存在する。

①歴史的背景の遺産:世界遺産、歴史的建造物、伝統芸能や祭り、食事など
└ex)京都の歴史的寺院、東北3大祭り、卓袱料理など
②最先端:最新テクノロジーなどを活用した先進的で目新しいもの
└ex)チームラボ、イマーシブフォートなど

さらに細かく分類することもできるが、簡略し大きく2つに分けることをご容赦いただきたい。

日本観光というと①に分類される観光資源を楽しみされている観光客が、国内外を問わず多いと感じている。

しかしながら、日本観光はその①に分類される観光地は、主に団体向けを想定して様々なルールメイキングやマネジメントシステムが構築されてきた。大型バスが止まり、いかに早く効率よく大人数を捌けるかが勝負だったのだ。これらに連動し、旅館やホテルも大きな箱を作り、いかに早く捌けるかを考え続けてきた。

これは旅行業法という日本の旅行に関する法律にもはっきり表れており、旅行業法はほとんどが団体旅行をイメージした法規制になっている。(当然、ライドシェアなどについては書かれていない。*ライドシェアが旅行業に入るかはさておき。)

こういった背景を捉え、地域の歴史的背景の遺産を時代に応じて、確かな情報を集め、適切に切り取り、キュレーションをして観光客に見つけていくことが大切であり、観光地経営のスキルと同等に高度観光人材に求められていることだと感じている。

●世界的な事例

個人的に、世界的な事例で上手にこの辺りをやっているなと思うの下記。

・ハワイ州政府観光局
・カリフォルニア州政府観光局
・豪クイーンズランド政府観光局
・ニュージランド政府観光局

もちろん、観光につく予算や規模が違ったり、国の政策にもよるが事例としてはとても参考になることが多い。

このあたりの人材マネジメントシステム、地域の観光資源を断片的に捉えずに時代にあったブランディングにキュレーションをしている技術は実に学びたいと思っている。

2.キャリアに「観光」という選択肢がもっとあっても良い

以前もこのnoteで触れたが、日本で「観光業」と聞くと、総合旅行代理店、エアライン、ホテル・旅館、ツアーコンダクター(添乗員)あたりがイメージされると思う。

間違いではないが、観光業は実はもっともっとたくさんのプレイヤー(職種)から成り立っている。例えば、日本酒の酒蔵でも観光産業に参入をして、広報的な職種の人物が、旅行会社相手に酒蔵見学ツアーを催していたり、私のように行政や民間企業と連携をして観光地を作る仕事もある。

観光業は、toCだけでなくtoB、toG領域もかなり多い職種だと考えている。個人的には、このあたりをもっと訴求していきたい。

●自分自身が高度観光人材になり、育てる仕組みを

まずは、自分自身が高度観光人材になることを目標に現職での実務を通してスキルや経験を積んでいきたいと考えている。

今や、地方行政の公務員ですら人材系企業とコラボイベントなどをして人材を集める時代だ。とてもいい流れだと思っていて、その地域に想いある人材が地域で旗振りやくをしてくれることで、観光はもちろん地域全体として新たな取り組みなどが行われる可能性が高い。

高度観光人材を育てる仕組みが圧倒的に不足している今、様々な人のキャリアに「観光業」という選択肢を作れるようにしていきたい。有識者たちが口を揃えておっしゃっているが、観光業は本当に国を支える一大産業になると信じているからこそ、「観光業」というソリューションを使って、日本や世界をより良い方向にしていく人たちが必要であると考えている。

国の光を観る。そのためにまずは、光を調節し一番星になれるように輝くことが必要である。

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