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回生

 鉄屑の海だけが何処までも流れ果てる砂の荒野のすみで、太陽が西から東へ沈むのを眺めながら、西暦から消えた週末を過ごしていた。私が搭乗するただ一隻の船だけが、ここに残されているが、他にはなにもない。仲間の船団は勇敢な突撃を強行した結果、この砂の海に散り果てて、いまでは鉄の藻屑となって、この地球と同化しているのだった。彼らは時の粒子になったのだ。
 なぜ私たちだけが生き延びているのか、ぼんやりと靄の晴れない頭で想いを巡らせながら、今日もサボテンを狩り獲って話しかける。サボテンには顔が生え、私の臆病をなじるように嘲笑っていた。それらは、かつて明日を守るのだと、熱く志を語り合った同志たちの顔と生き写しに思えた。ありし日の記憶さえ反転した夕陽に滲んで、私はいま、生きているのか死んでいるのかも分からない醜態である。星になって点滅したいとさえ思うが、そのような美しさは、美しく沈んでいったものにだけ与えられる、詩的な栄光に他ならなかった。私は世界のすべてから隔絶され、泥のような温もりとともに、ただ生きることだけを望んだ。その日世界が回転するとは思わなかったし、願わなかったにもかかわらず。

 酷いもので、私の弱さは私を守った。強さは破滅的な輝きを放って、あの空に輝く栄誉を手にしたが、燃え尽きる星のきらめきが我が仲間を守ることはなかったのだ。私たちは破滅をのぞまなかった。無謀な突撃などやめて、ただ風のない海のように、凪いだ平穏をのみ願って、あらゆるものが砂へ沈んでいくのを見送ったのだ。我らは最弱にして崇高だったし、彼らもまた、最強にして崇高だった。青い地平線の向こうには、ただなにもない海だけがあり、そこでは魂のみが生きていると、ただ信じるしかないのだった。誰もが流れ着くことを求めてやまないかの地に、私たちは辿り着くことができない。己の弱さを恥じながら、この銀色の砂漠を、蛇のように這いずり回って生きているのだ。
 私を見下すようにあざ笑っていたサボテンから笑顔が消えた。チェシャ猫のように嗤うサボテンを見たくはなかった。それらも私たちの内包する弱さが見せる蜃気楼であったのかもしれない。蜃気楼は残酷な鏡のように、真実をのみ映し、私たちの望む光をうつしてはくれないのだ。
 それでも、それでも、進むことに意味があるのだと、願っているだけでも許されてはくれぬだろうか。砂の底に沈んで眠る仲間たちが、いま私の弱さを呪っていたとしてもだ、私たちは生きることを許されてはもらえぬだろうか。サボテンの棘で口腔を血だらけにし、その血を涙とともに吐きこぼして、くちびるを紅く染めながら、嗚咽しながら、己の肌に爪をたてながら、空に回帰した同胞たちの安寧をのみ祈るのだ。私たちは弱かった。しかし弱かったから、いまこうして生きている。

 ずるずると、正しく鉛のように、船は進む。
 もはやあらゆる武器は無意味であり、あらゆる誇りはくず折れて、それでも豆電球のような輝きを灯して、立ちたいと願うことは誤りだっただろうか。
 無の果ての景色にどうか我々を導きたまえと、掲げた風見鶏に祈るのだ。私たちは弱いが、そう弱くはない。砲台は我々の筆である。そしておまえの筆である。折れそうなペンに寄りかかってでも立つのだ、さあ、筆をとれ。

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