マガジンのカバー画像

SS

38
~2000字前後の短編・掌編です。
運営しているクリエイター

2021年2月の記事一覧

朽ちた憧憬

 貴方の影が私の視界を黒く覆う。貴方の広い背中に遮られ、小さな灯りは行方をくらませてしまう。  浅ましい私の目を射る光明は、いつだって蜘蛛の糸の様で細く弱く頼りない。常より真直ぐに上ばかりを見ている貴方などに、如何してそれが見えようか。そう貴方には糸を手繰り寄せる意味も、必要もなかった、貴方の見通す世界にはいつだって眩い光が満ちているというのに、それなのに貴方は如何して私を振り返る。  手繰り寄せる意味ならば確かに必要はない、唯、わたしはお前を愛しているなどと諳んじる。