尼崎市の個人情報全部入りUSBメモリ紛失事件に心を痛めるコールセンター業務担当者も多いのではないかと思いました
情報リテラシが低すぎた尼崎市
尼崎市で個人情報全部入りのUSBメモリがなくなったそうです。これについては色々な論評が出ています。中でも多いのが「情報リテラシが低すぎるよね」というものでした。記者会見でパスワードの桁数を言ってしまったという件が主に取り上げられています。確かにわかりやすく杜撰です。
この問題で思ったことがもう一つあります。民間の情報リテラシーがかなり上がっているためこういう問題はすぐに看破されてしまうわけです。個人としての日本人はかなり優秀です。
ですが、組織の上の人たちがあまりにもわかりやすく失敗してしまっているためそれ以外の問題はあまり注目されていません。
見過ごされつつある「下請け」問題
この件で密かに「ああやっぱりなあ」と思っている人たちがいます。それがコールセンター業務をやったことのある人たちです。Twitterなどでは経歴を出さずにやっている人も多いのですが「やはり目の付け所が違うなあ」と思いました。
関連報道をよく読むとわかるのですが責められているのは市長さんとか市の職員です。ですが謝罪しているのは元請けの会社です。おそらく地方自治体で業務をやったことがある経験のある会社なのでしょう。NHKは在阪の大手IT企業と説明しています。日本には大手の会社は数えるほどしかありません。
ではなくした人は誰か?ということになるんですが関連会社の人と説明されています。NHKは関係先の企業の40代の男性社員と書いています。
ネットに経緯をまとめている人がいます。下記のリンク先について事実関係を確認したわけではないですが……ご参考まで。
普通の人は見過ごしちゃうと思うんですよね。でもコールセンター経験者の人は「元請けがしっかりしていても(そもそもしっかりしていたかもよくわかりませんが……)下請けがしっかりしているとは限らない」ということがわかっています。普段から「こんなわかりにくい受注では誰がどんな問題が起きても仕方ないよなあ」と思いながら仕事をしている人も多いはずなんですよね。
問題が起きても偉い人が騒ぐだけで現場は黙っている
元請けがいくら「実績がある会社」であってもどうせその会社がセキュリティを守るわけではないです。NHKが指摘するように管理規則はいくらでも厳しくできますが「それを守る体制が作れるか」というのは全く別の問題なんですよね。
全体としての責任の所在は曖昧ですから規則や体制強化の約束は実は何の保証にもなりません。実際に各社報道を見てみましたがやはりそこに注目したところは皆無でした。
コールセンター経験者は「実はうちもねえ」みたいなことは決して言いませんし、私もそれを表立って聞いてみようなどとは思いません。やはり言いにくいことというのはどの業界にもあります。だからマスコミは気がつかないままになります。
おそらくこの問題で本質的な多重下請けの問題について気づかれることはないでしょう。マスコミが気がつかなければ市役所はまた同じ失敗をするはずです。一方で、仕組みがよくわからない人は「マイナンバーカードで情報を一元管理するのは危険」というようなことを言って終わりになるかもしれません。実はシステムよりヒューマンエラーの方がリスクファクターとしては大きいのですがこれは実際に業務経験した人でないと実感が難しいと思います。
個人情報っていったん外に出てしまうと取り返しがつきません。ですが、普段からそれを扱っている人たちの情報管理って意外と杜撰なんですよね。個人がダメってわけではないんですが、集団としてはなぜか杜撰になってしまいます。
尼崎市のような下請け構造が常態化しているかどうかは現役のコールセンターの人たち聞いてみないとわからないですがこういう状態で「責任を明確化する」とか「体制を強化する」などと言ってみても口約束以上のものには決してならないと思います。
市役所としても「実績があるところでないと何かあったときに不安」だし「かと言って経費削減はしなければならない」と考えてしまうため下請けはダメですよなどということは言いにくいのかもしれませんね。
どうして今のような契約になったのか、市役所はそもそもこうした下請け構造を知っていたのかということについては、ぜひどこかの社に聞いてもらいたいものだなあと思いました。
まあ誰の目にも触れないNOTEにこっそり書いたところでそれが伝わることはないんでしょうけど……
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